Short

□ウソツキ。
1ページ/1ページ




自分が無力だとこんなに思い知らされたのは、初めてかもしれない。


涙が出るときは上を見ればいい。
そう言ったのは誰なんだろう。

見上げたら、涙が耳の中にまで入ってきて、視力も聴力も駄目になる。

もっと自分を嫌いになる。




「ルカ・・・っ」

通り名じゃない。
これは真実の名。

なのに、どうして返事をしてくれないのだろう。


「ルカ、ルカ・・・」

掴んだ腕が冷たい。
いつもひんやりしていて、それが気持ちいい、などと言っていた自分が憎らしい。




自分が受けた痛みより、相手が受けた痛みの方が痛いだなんて、皆本当に知っているのだろうか。



学校からの帰り道。
今日は晴れてて気持ちいいから、歩いて帰ろっか。
そんな風に提案してしまったのは、夕月。

ルカが反対なんかするわけもなくて、二人並んで歩いて帰った。



「ルカ。今度、さ」

「ん?」

少しだけ目を泳がせて、ようやく言えた。

「一緒に、海に行かない?」

「海?」

「そう。お弁当を持って」

ルカの驚いた顔を見て、夕月は刹那、後悔をする。

「ごめんなさい。嫌、ですか?」

「・・いや」

ふっと綻んだ笑顔。
たぶん、自分にしか見せてくれないであろう表情。

それを見て、夕月はまた、自分の想いを理解する。


「行こう。一緒に」





約束なんて、役に立たない。
彼を守ってくれるわけでもない。
こんな風に彼を見殺しにしてしまうくらいなら、約束ができる言葉なんかじゃなくて、彼を守れる力が欲しかった。



「・・ルカ・・」


中級悪魔相手なら、ルカ一人であれば勝てたはず。
自分はお荷物どころか、彼を殺した罪人にすぎない。


約束を破ったのは、彼じゃない。
自分だ。






◇かなり暗いですね。悲しい・・



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ