途切れた鎖

□腐敗の玉座
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…………して、しまった……。

「アン」

やや冷ややかなヴィスカの声が寝起きには悪い。

「あふ」

「おい、またかよ」

「まあまあ」

そしてランブに叱られ、セロはとうとう庇えなくなっていた。

「僕が片付けますから、ランブ洗ってあげてください。たしか、井戸がありましたから」

いつもは布で身体を拭かれていたが、井戸があるらしく文句を言いながらランブに井戸まで連れてこられた。

「あぶっ、つめたい」

そして、いきなり頭から水を掛けられた。

終始叱られながら身体を洗われ、乱雑に拭いて服を着せられた。

ご飯はおあずけされた。

「……あう」

ランブは小うるさいお母さんみたいだ。
いや、お母さんがどんなのか解らないが、たぶんこんな感じだろう。

そんな感じで一日が始まった。

「急ぎたいですが、今日はここで情報を集めましょう」

「王都での治安がさらに悪くなってるみたいだしな」

「アンはお留守番しときな」

三人は口々に言いながら宿から出ていった。

さすがに一週間連続に、みんなは呆れ怒ったみたいだ。

うー……。

部屋に備え付けられた荷物を入れる木箱に入り、心を落ち着かせる。

捨てられないよね。

ふと、そんな考えが胸中をよぎった。
瞬く間に、不安は膨れあがっていく。

部屋には皆の荷物はなかった。

必要最小限の荷物しか持ち歩かず、借りた宿も必ず安全ではないから絶えず側に置いていた。

そんな状況に私一人だけが、宿に残っていた。

「ヴィスカ!?ヴィスカ!!ランブ!!セロ!!どこっ!?」

暗い考えに潰されないように、慌てて部屋を飛び出した。

軽薄な行動とは思わずに。
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