途切れた鎖

□奴隷と山賊?
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真剣見を帯びた眼光で見つめられた。

曲刀にも先ほどより力が加わっているのか、ゆっくりと刀身を伝い血が滴った。

「お前はどうしてこんな田舎にいる?ご主人さまはどうした?どうやって逃げた?お前のご主人さまは誰だ?」

矢継ぎ早に繰り出された質問にどう答えればいいのか。

その質問全ての意味も解らないし、ご主人さまや奴隷そのものが理解できなかったから。

結局、無言でいることにした。

「…………………」

やや長い沈黙の後、「ち……」と舌打ちをして刀身を下ろした。

「案の定人形か。なら、捨てられたって結果だった訳だ。また、空振りかよ」

頭を掻きながら、女性は穴から身体を出した。

「そう、簡単にはいきませんぜ」

「ああ」

向こうから二人が話しているのを聞きながら、自分も穴から這い出て立ち上がる。

「ん?悪かったな」

女性はそう言い、歩きだす為背を向けた。

「姐さん、行きやしょう」

歩き出そうとした女性の裾を無意識に掴もうとした。

なぜかは、やはりわからない。
先ほどまで、殺されるかもしれなかったのに。

結局、掴むことはできなかったけど。

手は伸びた、そこで振り返えりもせず払い退けられた。

何事もなかったかのように、二人は歩いて行った。

その後ろ姿を、意味もなく見送っていたら女性が止まった。

数秒立ち止まったかと思ったら、踵を返して向かってくる。

忘れ物だろうか?

どんどん近づいて、目の前に立たれた時女性は見下ろし、頭に手を置いて語りかけてきた。

先ほどと違い優しい眼差しで、柔らかい声音で言い聞かせるように。

「アンリ、お前は自由だ。だから……この世界を憎みながら生きろ。もう会うことはないだろうな」

語りかけ、頭を一撫でし、女性は男性の方へと再び歩きだす。

私はその背中を追い掛け手を伸ばした。

「まって」

今度は振り払われることなく、裾を掴んだ。
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