途切れた鎖

□忍ぶ魔手
1ページ/1ページ

『王都セント=ダブラーク』

人口約一万五千人とされているが、これには奴隷の数は含まれていなかった。
そして住人は中級貴族や商人、兵士の身内が主だった。
その王都の中央に聳える灰色の巨城。
周囲とは一線をかくそこが王族のみ立ち入れる場所である。
謁見すら、手前の応接塔での遠隔対面であった。

そんな城を仰ぎ見ながら街を散策する女性二人。
一人は鎖を鳴らし城を眺めながら、もう一人は相方の手を繋ぎ周囲を観察するように流し見ながら歩いていた。

「あそこには、王様がいるんだよね。この奴隷制度を続けてる……」

そっと首に嵌まった拘束具をなぞりながら、なお城から視線を外さない少女。

「ああ……アタシラが倒す相手になるかもしれないヤツがいる場所さ。あの上から苦しむ国民を眺めて悦に入ってる腐った変態だ」

少女に返しながら、城を眺めすぐに興味が失せたように視線を周囲に巡らす女性。
鋭い視線は目深に被ったフードによって隠れている。

「いろんな匂いがする。でも……なんだか重くて、冷たい匂いが多いよ」

少女は視線を女性へと移し、逃がさないようにキュッと手を握り直す。

「大丈夫だよ。ここにアンの敵がいたとしても守ってやるからさ。さて、偵察もいいかな。街の様子も確認したし、戻ろうか」


そろそろもう一方も一旦宿に来ている頃だろうと当たりを付けて、二人も待ち合わせの宿に向かった。

この国の始まりの場所にて、何が待ち受けているのか。
自分たちの目的は果たして達せられるのだろうか。
多大な困難が待ち受けているだろうことを覚悟し、女性は小さな手を引いて仲間の元へ向かう。
この手を決して離してなるものかと、力を若干込めて。
少女もそれに呼応するように、手を固く結び前を見据えて歩き出す。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ