途切れた鎖
□失楽の目覚め
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さわさわと頬を撫でる風にゆっくりと目を醒ました。
場所を確認するよりも、頭がクラクラして若干の痛みに顔をしかめる。
「……ん」
痛みも引いて、改めて辺りを見渡す。
見慣れない光景だった。
なぜ、ここに居るのかもわからなかった。
それ以前に、自分が解らなかった。
所々に隆起した岩と、木々があるだけの場所に、自分一人だけがいた。
遠くに目をやると、川沿いに道が延びているのが見えた。
「わふぅ……」
ため息を吐き、立ち上がろうとし、光景以上に不可解なことを自覚した。
ジャラと言う音が身体から聞こえた。
まだ、スッキリしない頭で見下ろすがよく解らなかった。
自分の姿が。自分が身に付けているモノが。
左足首に鉄の輪が、千切れた鎖を垂らして存在した。
ボロボロの膝よりかなり上で切れている麻の服を身に付けていた。
あちこちが破れ、着ているというよりも羽織っているような状態だった。
それ以外は着ている物はなく、素肌が覗いた。
左腕も左足と同じく、鉄の輪と千切れた鎖。
右腕にも鉄の輪があった。
こちらの鎖は首へと繋がっており、手をやると首にも鉄の冷たさが感じ取れた。
「…………」
理解は出来なかったが、ここに居てもどうしようもない事だけはわかった。
だから、重い身体を付属品と共に持ち上げた。
気持ちの良い風に気分を紛らわして、遠くに延びる道を目指して歩き出した。