短編

□出逢いは受動、愛は能動
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『…ん?』


いつの間にか騒がしくなってきた店内。

時計をみれば、いつもならまだこまないはずの時間だ。


あ、そうか。
今日は日曜日だっけ。


あーあ、最近は毎日このファミレスに通ってたから、曜日感覚なくなっちゃった。


朝から夕方頃までここでレポートを書く。

大学で出された課題レポートを仕上げるべく、私はかれこれ1週間そんな生活を続けていた。


家よりもここの方が集中できるんだよね。

それにご飯も食べれるし。


こんなに長くいて、店員に怪しまれないかな…と思わないこともないけど、見回せば同じように長居してる人はパラパラいる。

まぁ私みたいに1週間連続でくる人はいないみたいだけど。ああ、一人いるんだった。

夕方頃来て9時ごろ帰る高校生の男の子。

チラリと顔を見たことがあるけど、これがかなりイケメンなんだよね。


かっこいい人って遊んでるイメージがあったけどこの子は毎日勉強してて偉いなぁと思う一方、そんな毎日ファミレスでご飯なんて栄養大丈夫なのかな、とつい心配をしてしまう。


でも見回せば今日は来てなくて。

まぁ当然っちゃ当然か。だって高校生だもん、日曜日くらい遊ばなきゃね。

そう思って課題を再び始めてから数十分たった頃だろうか。

向かいの椅子が引かれる音と共に“あの…”という控えめな声が聞こえて、慌てて顔を上げた。

『あ…。』


目の前にいたのは例の男の子。

真っ正直から顔を見るのは初めてだけど、思ってた以上に綺麗な顔に思わず見いってしまった。


「あの…この席って使ってますか?」

『……え!?ああ、ううん!使ってないよ。』


ハッとして答えたけれど、今ので見とれてたのがバレちゃったかな…。

少し不安気に顔を伺ったけど、どうやら気づいてないみたい。彼は私の言葉に安心したようにふんわり笑った。


「良かったぁ…。じゃあ相席してもいいですか?」

『うん、どうぞ。』


“すみません、失礼します”と言いながら彼は席についた。


『ううん、気にしないでいいよ。今日は混んでるものね。』

「そうなんですよ。でもラッキーかも。」

『ラッキー?何が?』

「あっ、いえっ、なんでもないです!」


誤魔化すようににこりと笑った彼にますます気になる。

でも彼は鞄から勉強道具を出しはじめたから会話は中断。

私たちはお互いの仕事に集中をするのだった。






ふぅ、やっと終わった〜。

完成したレポートの束を見るけれど…うん、満足満足!

かなりの時間をかけただけに自信作だな。

もう少し達成感に浸っていたい所だけど、ここで空腹感が押し寄せてきた。

そういえば、お昼食べるの忘れてた。今はおやつの時間だし、何かデザートでも頼もうかしら。

前を見れば彼は真剣にノートと向き合っていて。
うん、そうだ。

こうして相席になったのも何かの縁だし、明日から私はもうここに来ないわけだから、
何かおごってあげよう。

勉強頑張ってるご褒美も兼ねてね。


そこで呼び出しボタンを押した私はデザートを2つ注文した。




やがて届いたデザート達。

どう彼に声をかけよう。
勉強の邪魔にならないかしら。

私が迷っていると、彼は伸びをした。
その拍子にテーブルにあるデザートに気付いたみたい。

私を見てニコリと笑った。

「わぁ…美味しそう。レポート終わったんですか?」

『うん、お陰さまで。あ。ねぇ、ワッフルは好き?』

「はい。」

『じゃあこれ、あげる。』

微笑みながらお皿を向こうに押せば、彼は驚いたように目を瞬かせた。

「僕に?いいんですか?」

『毎日勉強を頑張っているご褒美よ。』

「わぁ、ありがとうございます!!」

『どういたしまして。さ、食べよう?』

そこで浮かんだ1つの疑問。

『そう言えば、私がレポート書いてるっていうの、よく知ってたわね。』



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