Promise
□Crying
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海鳥の鳴き声が響いていた。
キラは、寄せる波打ち際に立ち、その光景を見つめる。
風がゆるく髪を遊ばせた。
晴れた空と、青く凪いだ海。──その水平線に。
瞬く光が見えた。
遠い記憶を呼び覚ます、閃光。
あれは戦いの証。再び切られた火蓋。
穏やかな風の吹く浜辺は、波音と鳥の声だけが聞こえていた。
遥か遠いあの光のもたらす音は、ここへは届かない。
──届かないはず、なのに。
爆音が聞こえる。
それは記憶がもたらすものなのか。
戦火の渦中にいるのは、戦いの女神の名を冠したザフトの戦艦だった。
墜ちる悲劇の墓標を砕きし艦。カガリとアスランをこの国へ送り届けてくれた、いわば恩人だ。
それなのに。
いま、かの艦は攻撃を受けている。
中立を謳ったこの国――オーブは、とうとうその理念を折り、大西洋連邦と同盟を結ぶことが決定した。
プラント側は、積極的自衛権の行使という名目で降下作戦を開始している。
おそらくは、それゆえの攻撃。
同盟を結ぶに当たっての生贄として、この国が差し出しのだろう。
待ち伏せされた艦。──そして、戻ることも、きっと許されない。
進むしかない道を、彼らは往く。
音の無い爆光が瞬いては消える。
彼らは今なにを思うのだろう。
この国の裏切りと、ナチュラルの愚かさを憎むのか。
それとも、終わらない争いを嘆くのか。
打ち寄せる波間に、誰かの悲しみの色が落ちる。
あぁ…泣いている。
キラは静かに、その光景を瞳に映していた。
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