Promise

□The twinkling star
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「あ…」

子供達の声と食器の立てる音に混じって、小さく聞こえた声にラクスは振り返る。

「キラ?」

声の主の視線は食卓に注がれていた。
何かまずいことがあったのだろうか?
彼の傍へ行き、問いかける。

「どうかなさいました?」

怪訝そうな表情を浮かべたラクスに気付くと、キラは小さく笑ってみせた。

「これ」

そう言って彼が示したのは、皿に盛られた料理。
綺麗な形をしたロールキャベツだった。

「ロールキャベツが、何か?」

「うん…これ、もしかして母さんが?」

「ええ、そうですわ」

夕食のメニューを決めたのも調理をしたのも、キラの母であるカリダ・ヤマトだった。
ラクスは初めて作るので、彼女に手ほどきを受けて手伝っただけで。

「懐かしいなと思って」

「なにか、思い出でも…?」

「うん、僕っていうよりは…アスランに」

懐かしい過去を思い出しているのか、キラの表情はやわらかい。
口元に笑みを刷いたまま、キラは続けた。

「アスランが好きだったんだ、母さんのロールキャベツ。月に居るときね…よく、うちでご飯食べてて。おばさん、仕事で遅くなることが多かったから」

「まぁ、そうなんですか」

キッチンで料理をよそっていたカリダを振り返ると、彼女も懐かしそうな表情を浮かべていた。

「ええ、美味しいって言ってくれて」

調子に乗って何度も作っちゃったのよ、なんて苦笑交じりに寄越された言葉に、そうだったね、とキラが笑った。

「今度、アスランがきたら作ってあげて。きっと喜ぶから」

「ええ、そうするわ」

笑うとこの親子はとてもよく似た雰囲気を持っていると、ラクスは思う。
血の繋がりがないことも、知っているけれど。
やはり、彼らは間違いなく『親子』なのだ。


食事を終え、ラクスは後片付けのためにカリダと二人でキッチンに立った。
今日は、キラが珍しくたくさん食べてくれた。
懐かしい料理に食欲が出たのだろうか。

戦後すっかり食の細ってしまったキラを、二人とも心配していて。
そっと顔を見合わせて、小さく安堵の笑顔をこぼす。

水音と、陶器の擦れる音が響く。背後からは、子供達のはしゃぐ声。とても穏やかな時間だった。


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