君に届け
□母の日
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ことの始まりはあやねの一言だった。
「ねぇ、今週末って母の日じゃね?」
「あ゛」
「えっ」
「「……」」
「まさか忘れてたの?」
「あはは…。すっかり」
風早はそう言って苦笑いした。
実を言うと、もうすぐ風早の誕生日だったため、そちらの方に気を取られていたのだ。
それは爽子も同じ様で、さっきから固まっている。
「あー、母の日かぁ。もうそんな時期なんだ」
千鶴に至っては、そんなすっとぼけたことを言っていた。
どうやら何かしらしようとは思っていたが、忙しい日々を送るうちに、何も準備出来ずに1週間を切ってしまったらしい。
今更だとは思ったけれど、母の日の企画を始めた。
「やっぱここはみんなでカーネーション買いに行かない?」
あやねが提案すると、千鶴が意義を唱えた。
「親の金で買うの?」
すると、みんなうっと詰まった。
「で、でもさ、やっぱ母の日だし、あった方が花があるじゃん」
「んー、まあ、そうだけど…」
未だ渋る千鶴にあやねは、別の提案をしてみた。
「じゃぁさ、いっそみんなで集まってパーティーしない?割り勘すれば経費浮くでしょ」
「あ、いーね。でもどこで集まる?」
「やのちんの家じゃない?ちょうど真ん中あたりだし」
「えっ、あたしの家!?」
あやねは驚いていたが、爽子も賛成顔でこちらを見ていたので、反論出来なかった。仕方ないそうしようと思ったところで、
「……俺、パス」
今まで頬杖をついて成り行きを見守っていた龍が、そう言った。
もちろん来るのはブーイング。
「えー、龍何でよ」
「そだよ。龍。集まろ」
「真田くん……」
「………」
それでも龍は無言だ。
爽子は、本当は龍は私たちと一緒にいるのが、嫌なんじゃないかと思い始めて、沈んだ気持ちになっていた。
それを見ていたのだろうか。龍が爽子に話し掛けた。
「…黒沼、心配しなくていーから」
心を読まれたみたいでびっくりしたが、爽子は頷いた。
「えーでも龍いないと物足りなくない?ねぇ、ちづも何とか言ってよ」
「んー、でも今龍、プチ反抗期なんだよね。連れてくるの恥ずかしいんじゃん?」
「あー、そっか。…って龍今反抗期なの!?全然見えない…」
「うん。まあ、あんま表情変えないよな、龍」
「うん。しゃーないよ。龍寝ちゃったし。これもう起きないね」
そんなこんなで、みんなは残念がっていたが、4人で母の日のパーティーをする事になった。