君に届け

□母の日
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「爽〜、そっにあるもの取って〜」

「あっ、はーい」


母の日前日。


「爽子〜、次どうすればいい?」

「あっ、えっと…混ぜてくれる?」

「はいはい」


千鶴宅にて。

パーティーで出すケーキは、もう作ってしまおうということで、パートで母がいない千鶴の家にいる。


「ねぇ黒沼、俺何すればいいの?」

せわしなく台所で動く3人に、風早は置いてけぼりを食らっていた。

「今は特にないよ。ゆっくり休んでて?」

そう言われたけれど、性格上、自分も何かしなくては、と思ってしまう。
それを察してか、爽子は頼みごとをした。

「じゃあ風早くん。お皿、洗ってくれる?」

風早は笑顔で頷くと、洗い物まで気が回らなくなった千鶴の代わりに流しに立った。






母の日当日。

千鶴は昨日作ったケーキを持って、あやねの家へと向かっていた。

まだ集合時間ではなかったが、流石にケーキを持って母と歩くのは…嫌だ。


龍が心配だったが、今日は母の日だし、家事などは普段以上に手伝わなくてはならない。
ふうと溜め息を吐くと、パーティーを笑顔で出来るよう、気持ちを切り替えた。




パーティーは思ったより順調に進んだ。
母親たちは意気投合して、仲良くおしゃべりしていたし、ケーキも上手に出来ていた。

風早と爽子がからかいの的となったのは、言うまでもないだろう。

金欠だったため、カーネーションは1人一本となってしまったが。





帰り道。
風早と爽子は千鶴たちの変な気遣いで、2人きりになっていた。

そうなることは大体分かっていたため、風早は送っていくと言い、2人仲良く歩いていた。

「パーティー、うまくいって良かったね」

「うん」

言葉少なに、けれど繋いだ手を決して離さずに、2人は歩いてゆく。



「風早くん」

「ん?」



「今度、遊びに行きたいな。…あの、えと、…ふ、2人で」

「うん」



fin.
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