イベント小説
□トリック オア トリート!
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そして、ハロウィン当日。
俺はごちそうを用意してシズちゃんが帰って来るのを待っていた。
インターホンの音がして「どうぞ」と言って中に招き入れた。
「じゃあ、さっそくコスしようかっ!はい、これ!!選ぶの結構悩んだんだよ?シズちゃん何でも似合っちゃうから………」
羞恥心を押さえて俺は言った。
最近は素直に言うことに決めた。
其の方がシズちゃんは自然な笑顔を俺にもしてくれることが分かったから。
でも本当は滅茶苦茶恥ずかしい。顔から火が出るくらいに。
だからこれは俺のちょっとしたイタズラをしかけた。
「じゃあシズちゃんはここで着替えてね!俺はそっちの部屋で着替えるからさ」
「あぁ」
バタンと扉を閉めて苦笑いした。
きっとすぐに俺の名前を呼んで怒るに違いない。
だってそういうところは俺の思った通りに動いてくれるし―――…
ガンッ!!
後ろのドアがいきなり勢いよく開き、後頭部を打ちつけた。
「いったぁー、何すんだよ?」
「てっめぇ……なんだこの服は!!完っ全に俺のこと馬鹿にしてんだろぉが、あぁあ゛!?」
「えー?似合うと思ったのにな、そのシンデレラ・ド・レ・ス」
俺が用意したのはシンデレラドレスだった。
青筋を立てたシズちゃんは胸倉を掴んできたのですぐに両手を広げて「冗談です、冗談です!!」と叫ぶと降ろしてくれた。
「本当のはこっちだよ、次のやつで文句があっても部屋には入ってこないでちゃんと着てね」
「分かったよ、その変わりお前もだぞ?」
「えー何言ってるの?シズちゃんの着替えるシーンなんて全然見たくないから安心しなよ」
「そうかよっ、」
バタンとシズちゃんは部屋から出ていった。
その時シズちゃんが笑っていたのに気付かずに―――…
俺は袋を開けて驚愕した。
(え、これを俺に着ろって言うのか……!?)
袋に入っていたのは魔女の服みたいだ。
いや、まだそれはいい。
問題はその服が女物ということ。
ドアノブに手をかけたところで止まった。
さっき俺は自分から着替えるまで部屋には入らない、と言ってしまったのだ。
盛大なため息をついてその袋と向かい合った。
たぶん、俺が着たら喜ぶのだろうなぁーなんて考えて顔をぶんぶんと横に振った。
でもこの服を選んで、買った時のシズちゃんの姿を思い浮かべたら口元がゆるんでしまった。
「しょうがないなぁ………今日だけだからなっ…」
そう自分に言い聞かせて服を脱いだ。
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あぁ、やっぱり着るんじゃなかった。
黒を基調とした服で胸元が結構大胆に出ていて紐が前で交差していて、わざとなのかへそも見えてしまうくらい短く、下のスカートもこれまた短い。
タイツでも履きたいくらいだが生憎、そう都合よくそんなものなかった。
「くっそ――――…シズちゃん絶対俺の手でいつか殺してやるっ!」
とんがり帽子をかぶって鏡の前におそるおそる立つと以外に似合っていたのが悔しい。
すると、ドアをどんどんとシズちゃんが叩いてきて身体が震えた。
「おいっ、いつまで着替えてんだよ」
「シ、ししししシズちゃん、待って、まだ開けないでっ!!」
と言った時にはすでに遅く、中に入ってきていた。
近くにあった俺のコートを羽織るとシズちゃんはずかずかと目の前まで迫ってきた。
「なっ、何―――…」
「それ脱げよ、コスプレしてる意味ねぇじゃねぇか」
シズちゃんの手が俺のコートを掴んでその手を俺は掴んだ。
怪訝そうにシズちゃんは俺を睨み、俺も睨み返した。
「やっ、可愛くないから!!ていうか、シズちゃんこれ女物じゃん、どういうこと!?」
「別にいいじゃねぇか。それにお前ほっそいし、着れるなと思って」
「違うっ、そうじゃなくて季節を考えて!今秋だよ?いや、もう秋も終わろうとしている時期だよ!?俺のことも考えてくれないかなぁ?」
「考えた結果がこれだ」
堂々と言い切ったこいつを誰か殴りとばしてくれ。
俺の抵抗も空しくコートをとられると両手を交差させて隠しているつもりだがほとんどはシズちゃんに見られている。
黙ってしまったシズちゃんはぽつりと呟いた。
「てめぇ………可愛いな……」
「はっ!?男に可愛いて言うな、早くシズちゃん死んでお願い神様、いや神様とか信じてないけど死神でもなんでもいいから!」
「まぁそう言うなって、飯食おうぜ魔女さん?」
そう言って腕を引っ張られ部屋を出てリビングに戻った。
そこでようやくシズちゃんの格好を見てあまりに似合いすぎてて目が反らせなくなった。
俺がシズちゃんに選んだ服は吸血鬼のコスだった。
スーツを少しいじってアレンジしてあり違う見方をすれば執事にも見えるような格好だ。
いつも見ているバーテン服とかジャージとかと違ってすごく新鮮だ。
その視線に気づいたのか「あんま、見んな」って言って照れるシズちゃんにはやられた。
「あっ、料理さめちゃったね……もう一回温めるよ」
「あぁ」
汚れると嫌だからエプロンをつけて作ったシチューを温め直した。
すると背後にいつの間にかシズちゃんがいてびっくりした。
「なっ何―――ッ!?」
振り返るのと同時に口を塞がれて逃れようとしたが後頭部を押さえられ固定されてされるがままになってしまった。
舌が入ってきてそれを拒まずに受け入れた。
どちらともいえない唾液が俺の口端を伝って服にしみ込んだ。
空いていた片方の手を腰に添えられて撫で始めてきたので胸板を押すが離れようとしない。
股間をシズちゃんの膝でぐりぐりと押されて熱い息が漏れた。
「あッ……ん、んっ」
身体が熱くなってきてもう自分の足じゃ立てないくらいになっってしまった。
ようやく口を解放され、シズちゃんを見上げると意地悪く笑った。
「続きはあとで、な?」
「ズルぃ……」
「ほら、手伝ってやるから」
優しく今度は笑いまた身体が熱くなった。
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