静臨*長編
□守るから
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依頼内容はそんなに難しいものではなくすんなりと早く終わった。
携帯で時間を確認するとまだ昼の1時半だった。まだ少しブラブラでもしようかと思い裏道を出ようとした瞬間後ろから誰かに口元を布で覆われふさがれた。
しまった、と思った時にはもう遅く意識はどんどん沈んでいった。
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油断していたつもりはなかった。
何か所か俺は殴られていたらしくて左足が思うように動かない、腹のあばら骨も折れてしまっているかもしれない。
体中の苦痛に目が覚めるとどうやら工事のような所だった。声を出そうとしたがガムテープのようなものが貼ってあるらしく声は出ない。手足も拘束されているらしくギシギシとこすれる音がするが切れなかった。すると複数のガラの悪いやつらの笑声が聞こえた。
「おっ、やっと起きたかぁ?折原臨也さん?」
そう言ってリーダーと思しき男が俺に近づいてきた。すると前髪を掴み上げられ痛さを感じた。
「いやぁ俺の弟があんたのことひいっちまったらしいなぁ?悪いことしちまったなぁ」
弟?ひいた?……あぁ、俺を轢いたこの前の奴の兄か親戚ってとこか。
俺は隠し持っていたもう1台の携帯を取り出し操作した。画面は見えないが何処を押せばなど分かる、そして少し迷ったあげくある人にメールを素早く打ち込み送信した。
「って思ってるけどさぁ?やっぱり重症を負わせたうえにムショまで入れるとかやりすぎじゃない?」
あぁ、声が出せたら『自業自得』って言ってやりたい。……ていうか、俺がそいつに重傷負わせたわけじゃないし!シズちゃんだし!!
首を横に振るとそれを察したのか男が笑った。
「わーってるよ、てめぇが重傷を負わせた奴じゃないくらい。だけどお前があの池袋の喧嘩人形……平和島静雄を呼んだんだろ?そして俺の弟をあんなにぶん殴らせたんだろ?てめぇら中良子よしみてぇにいつも喧嘩してたもんなぁ?」
は……?
全然違うし!!
ていうかどこがあの壮絶な殺し合いで仲良く見えるんだよっ!?
しかもこんなことするならシズちゃんにしろよ!
「本当は平和島静雄をやるつもりだったが、あんな喧嘩人形に敵う訳ないだろ?そんで考えたんだよ、その静雄と仲がいいお前がぶん殴られたらどんな顔すんのかな〜って?」
……つまりシズちゃんはムリだけど俺ならやれると…。
随分俺も舐められてしまったものだ。
隠し持っていたいくつかのナイフはなくなっていたが、腰につけてあったナイフはありそれで腕の縄をすばやく切った。
そして足の縄も切りよろよろとはするが何とか立てた。
「んなっ、てめぇまだナイフを持ってやがったのか!?」
ビリビリと口元にあったガムテープを取りさった。
「生憎俺はいつもシズちゃんとそれなり同等に闘っているのは伊達じゃないんでね。あと、君のその弟君は自業自得だろ?シズちゃんと殺し合いしてたらたまたまその時に俺が轢かれただけだしね、怨むなら俺じゃなくてシズちゃんを恨んでよ」
周りを見渡すと思っていた以上の人数の男達がいた。
(この人数をこの怪我でやるのはキツイかな……)
そんなことを考えていたらリーダーと思しき男は焦っていた顔からニヤリと笑った。
「はははっ!先手うっといて正解だったな!!」
周りにいた奴らもどっと笑い出した。
一体何のことだか分からなかったが急に足に力が入らなくなり体中が熱くなった。
「うっ、く……何か盛ったな…?」
「せいかっーーい!正確には結構強い媚薬だけどな」
相手を睨むが体中の力が抜けその場に座り込んだ。ナイフを横にいた男に簡単に奪われてしまい男たちに囲まれた。
一人の男の手がニヤニヤしながら手を伸ばしてきた。
『シズちゃん』そう何度も心の中で叫びながら誰かに聞こえるはずもなく俺の中だけで響いた。
そして恐怖の時間が始まった―――…
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