静臨*長編
□だから嫌いなんだ
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まだシズちゃんは俺を追いかけてくる。
そろそろ身をどこに隠そうか考えていると後ろからシズちゃんが俺の前にジャンプしてきた。
「人間離れのジャンプだね、あ、人間ではないか!」
そう言ってゲラゲラ笑った。
そしてシズちゃんは静かに口を開いた。
「お前、どうしたんだよ」
は?
「っ……いきなり何言ってんの?別にどうもしないし」
「さっきからお前の投げてくるナイフはいつもよりあたらねぇし、てめぇは泣きそうな顔してるじゃねぇか…それに今日のお前、ノミ蟲らしくねぇ」
え、泣きそう?
俺が?
なんで?
シズちゃんは一歩前に足を踏み出した。
それに気付き臨也も一歩ずつ後ろに下がった。
「来ないでよ…それに、俺はいつも通り。今日は仕事が忙しくてナイフを振るうのも疲れてるの。あと、泣きそうなのは………」
頭がぐちゃぐちゃで何も考えられなくて言葉がでてこない。
「泣きそうなのは…なんだよ?」
「っ……知らない!!」
俺はシズちゃんに背を向け走り出した。
知ってる、これは醜い嫉妬。俺にもあのロシア女みたいに笑いかけてほしいだけなのに……。話とかしたいだけなのに……。
でもきっとこの気持ちを伝えたらこの関係は壊れる。いや、いっそ壊してしまおうかとも考えた。
そうすれば未練も何もなくシズちゃんを忘れられる。
でもシズちゃんと出逢うたびにその考えは揺らいでケンカだけしてその日が終わってしまう。
いつもシズちゃんは俺を追いかけてきた。それは少なくともまだ俺はシズちゃんに飽きられてない証拠だよね?
それだけで充分な気もする。
でも、でも…
「おい、臨也っ!!」
「ついてこないでよ!警察にストーカ―がいるって通報するよ!?」
「ストーカーじゃねぇし!待てよ!」
なんで、なんで…
「なんで追いかけてくるんだよ!」
その言葉と同時に涙が溢れた。
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