静臨*長編
□だから嫌いなんだ
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今日は早めに仕事が終わりトムさんと別れロシアから来た後輩とたまたま帰り道が一緒になり歩いていた。
「好きな人…貴方にはいますか?」
「な、なんだよいきなり……」
「気になったので率直にきいてみました、否ですか?それとも無ですか?」
「それどっちもいねぇってことになるよな……」
「で、どちらなのですか?あの情報屋ですか?」
俺はそこで片手に持って飲んでいた缶コーヒーを口からマンガでよく見るような光景で吐き出した。
「ゴほっ、ゴほ…んな、なんでそこであのノミ蟲が出てくるんだよ!!」
「そんなの見ていれば分かります。後、トムさんも似たようなこと言っていました。」
俺は缶を公園にあったごみ箱に放り投げ口元を拭いた。
「んなこと、ある訳ねぇだろ?!はぁ……」
ため息をしながら口元を緩めた。
やっぱり身近にいる人たちは気付いているのか…でもこの気持ちに偽りはない。
ただ、この気持ちを吐き出せばこの関係はなくなるかもしれない。
なら、このままあいつをずっと追いかけるのも悪くはないような気がする。
その瞬間背後からあいつの臭いがした。
振り向くと同時に頬にかすり傷ができ、赤い血がツーっと流れた。
あとからナイフがとんできたことが分かりその方向を見るとそこには口元を歪ませた臨也がいた。
だが眼の奥は悲しそうな、今にも泣きそうな眼をしていた。
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