静臨*長編

□覚悟しろよ?
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<帝人視点>



「なぁ、帝人!やっぱり今日も勉強会なんかじゃなくてナンパしようぜ!だって今日は休日だぞ?青春は今だけだ、走りぬけていって気付いた時には老人になっているなんて俺には耐えられない!」

「そっか!じゃあ正臣だけ走り抜けて堕ちていけばいい」

「ちょ、酷くない!?前から可愛くなかったけどなんでこんな毒舌な奴になっちまったんだよ!杏里はこんなにエロ可愛いのに!」

「えっ…!?」



これはいつもの日常会話何も変わらない。

正臣はまた一人で突っ走り強引に僕と園原さんを引っ張っていく。



「実はな、ナンパも大事なんだがな、なんとっ!今日オープンしたばっかの新しい有名なパン屋ができたらしんだよ!そこをチェックしようと思ってな!」

「チェックって何のためなの?」

「そりゃあ、もちろん女の子を誘うためのデートスポットにふさわしいかを調べるためさ!…てのもあるけど、たまにはこういうのも悪くないだろ?」



正臣は無邪気に笑った。
確かに悪くない。今こうして何も変わらず楽しい生活があるだけで充実していた。
園原さんと正臣と僕の変わらない日常。







「あぁ!美味かったな!ちょっと腹痛いわ」

「それは食べ過ぎなんだよ、ね、園原さん」

「そうですね…。でもたくさん食べることは悪いことではないと思います」

「ほらぁ!杏里だってこう言ってくれてんじゃん!…しょうがない、では食後の運動としてナンパしよう!」

「どうしてそんな経緯にいたるの…」



ついついてきてしまい公園のような広場にきた。



「んじゃ、早速いってみますかぁ!お、いきなり綺麗なお姉さんはっけーーーーんっ!しかも一人とか誘ってんのかぁ?」


正臣は走るのが速い、しかも園原さんもかなり速くて結局僕が最後に追いついた。



「そこのおねぇさんっ!今ヒマぁ?」



正臣が話しかけた人はすごく大人っぽく少し目元がキツい感じがした。
だからすぐにこのナンパは終わると思った。
でも、その人は優しく笑いかけてきた。



「何かしら?もしかしてナンパしてるの?」

「ありゃりゃ、もうばれちゃいましたかー。でも話が早いですね!どうですか?俺とランデブーみたいなことしちゃいませんかぁ??」



ちょ…直球!!

このままだと話が長くなりそうな気がして園原さんに帰ろうっと言おうと思ったら園原さんはずっとその女性を見つめていた。



「どうしたの園原さん?」

「あっ、いえ……なんか何処かで会ったことのあるような気がして」



そう言われて改めて見ると確かに見覚えのあるようなないような…。



「はは、ランデブーは遠慮しとくわ。貴方…確か紀田正臣君だよね?」

「え…そぅっすけど…、はっ!もしかして貴方もしかしてエスパー!?」

「エスパーねぇ…じゃあそういうことにしておいてくれる?」



正臣の冗談にも乗ってくれる変わった人だなと今更思った。
普通、こんな風に話しかけてもこんなに返してくれるなんて滅多にないし…。

もう少しで思い出せそうな気がしていたら急に横を何かがかすっていって身体が固まってしまった。
その飛んできたものは地面にそのまま突き刺さった。



変形をしたガードレールが。



こんなことできるのはもうあの人しかいない。



「はは、まさかこんな近くにいたのか…でも、まだやることがあるからね」



よく分からない言葉を言うと女性は走って行ってしまった。
そして今度やってきた人物は青筋を浮かばせ、バーテン服を着た池袋の喧嘩人形『平和島静雄』だった。



「いいぃぃぃぃざぁぁぁぁぁやぁぁぁぁぁっ!!何処にいる!?あぁ゛、くせぇ!!」



その恐怖ともいえる存在がこっちに向かって走ってくる姿はまさに獣というか、怪獣というか…。
固まったまま動けない俺を正臣は引っ張った。



「おい、帝人!やばそうだからここ離れるぞ!」

「え、ぁ、うん」



3人で走り出してすぐにその場から離れた。
そういえば静雄さん『臨也』って叫んでたな。ってことは近くにいたのかな…ってあれ?

さっき正臣がナンパしてた女の人…臨也さんに似てなかった…?

走ってる途中で正臣に声をかけた。



「ねぇ正臣、さっきの女の人臨也さんに似てなかった?」

「はぁあ?あ、確かに似てたかもだけど胸があったから違う、俺はあれをDカップとみた!」

「いや、そんなこときいてない」

「あ、もちろん杏里の胸の方が大きい!そこは安心してくれ」

「それもきいてない」



こんな会話をしていたらすぐにさっきのを忘れてまた別の話題に移っていった。







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