静臨*短編
□飴玉
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頬をまるくさせた臨也は仕事用デスクに向かってパソコンと携帯を器用に使い分けながら仕事を黙々とこなしていた。
頬をまるくさせているとは言ったが、別に怒っているわけではなくて飴玉を舐めているからだった。
最近よくあいつは飴を舐めるようになって理由を聞いたところ、
『口がさびしいから』
と答えた。
「ン――!やっと終わったぁ〜」
「毎日大変だな」
「まぁこれが俺の仕事だしねっ、と」
パソコンを閉じると横に来たかと思えば俺の足の上に頭を置いて寝っ転がった。
「……何してんだ、てめぇは」
「んー?膝枕だけど?そんなことも分かんなくなっちゃったのかな?」
「てめぇの首、へし折ってやろうかぁあ?」
「丁重にお断りするよ」
髪に触れるとくすぐったそうに身体を捩った。
さらさらで俺の痛んだ髪質とは大違いだ。
ていうか普通、膝枕とは俺が臨也にするべきではないんだろうか?
よくよく考えてみると俺が膝枕したことなんてない。
「なぁ、俺にも膝枕してくれよ」
「え〜、やだよ。足いらくなるじゃん」
「俺はいいのかよ」
臨也はまだ口に入っている飴玉を舐めているらしく活舌が少しおかしい。
というか、エロい。
「今は何味舐めてんだよ?」
「ん?レモンだよ、シズちゃんにはちょっと合わない味かも」
「ふーん、俺にもくれよ」
「そっちのデスクの上に―――っ!?」
俺は臨也にキスをして口内に舌をいれて大部小さくなっていた飴玉を器用に舌で拾って自分の口の中に入れた。
「ん、すっぱいな……」
「はっ、いきなり何すんの!?あっちにあるじゃん!」
「膝枕してやってんだ。その代金だ」
「っ……、信じられなぃっ!」
顔を赤く染めた臨也は横に寝がえりをした。
臨也はキスが好きらしく、いつもするたびに耳まで赤くしていて可愛い。
それを口に出して言ったことはないけど、本人もたぶんそのことは気づいてはいないだろう。
「ほら、すねんなよ」
「すねてない、んっ……」
俺と臨也の口の間で飴玉を行き来させて何度もキスを繰り返すと臨也も答え出していつの間にか飴玉はなくなり水音の響くような濃厚な口づけをしていた。
位置的に臨也の方に唾液が流れ口端からだらしなく零れていた。
どのくらいしたのかようやく離すと胸を上下にさせて臨也が深呼吸を繰り返した。
口端についていた唾液を舐め取りまた軽くキスをすると臨也の目はトロンとしていて理性が何処かにいってしまうのを抑え込んだ。
「眠ぃ………」
「分かった、夕飯は俺が作っとくから」
「ん……、あ、インスタントは嫌だよ?」
「分かってるよ。おやすみ」
「おやすみ…」
軽く臨也の頭を撫でると柔らかい笑みを浮かべて瞼を閉じた。
ある日のさりげない、秋晴れの午後のこと。
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