イベント小説

□嫌いにならないで
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「今日……花火でも見にいかねぇか?」

「え…?行く、うん!行く!!」












********************


















そんな会話を朝して今は夜。
仕事を早く終わらせて俺はシズちゃんを待っていた。一応地元なので今日は変装も兼ねて女物の着物を着てウィッグもつけてシズちゃんと約束した場所で待っていた。

シズちゃんから俺を誘ってくれるなんて滅多にないことで胸は高鳴っていた。



「早くシズちゃん来ないかなぁー♪」



携帯を開いて時間を確認すると約束の時間まであと15分くらいだった。

人混みに目をやると、そこには家族連れや友達同士、そしてカップルと色々な人たちがいた。
時間もあるので少し人間観察をし始めた。


あるグループに目をやった。それは家族連れだった。
父に母、そして5,6歳の女の子。
ぁ…あの父親は確か元粟楠会にいたやつだな……。
奥さん、気付いてないんだろうなぁ。
その父親には愛人がいるだなんて。
きっと夢にも思っていないだろう。あんなに楽しそうに何も疑いもせず笑っているのだから。

あぁ、それがばれたときの奥さんの顔を見てみたい。
絶望か、それとも許すか、それとも何も思わないか。
あぁ、そいつを殺して自分も死ぬってのもありだね。

未知数の人の感情は俺を飽きさせない。
これだから人間っていうのはおもしろい。




そんなことをしながら時計をもう一度確認するといつの間にか約束の時間より30分も過ぎていた。

周りを見回してもシズちゃんの姿は見当たらず、携帯の画面にも着信もない。
まぁ、シズちゃんが遅くなってしまうのはよくあることだ。
あの、仕事ならしょうがない。
また携帯を閉じて前を見ると4人の高校生くらいの男たちが俺の方に歩み寄ってきた。



「ねーねー、お姉さん、さっきから1人だよね?暇なら一緒に遊ばない?」

「…連れを待ってるの」



4人はいかにもチャラそうな感じでピアスやらなんやらが色々ついていた。



「えーいいじゃん、ちょっとだけだしさ!」



伸びてきた腕を俺は思いきり振りはらって顔をあげて睨みつけた。



「結構です」

「うわっ、予想以上に綺麗なおねーさんじゃん!」



日本語が通じないのかこいつらは……。



と、イライラし始めたところで立ちあがってとりあえずその場を離れることにした。



「ちょっとー待ってよ、おねーさん!」

「いい加減にっ――痛っ!」



振り向いた瞬間腕を思いきり掴まれてギシっと嫌な音がした。



「そんな逃げなくてもいいじゃん?俺達と気持ちいいコトしようぜ…?」

「お断りだね」



すばやく屈んで二人を足払いしてその二人を心配している隙に走って逃げた。
その後ろから罵声が聞こえるが今はそんなのかまっていられない。

でも、今日は履き慣れていないサンダルの為すぐに足が痛くなった。
大通りに出ようか考えてみたがそうするとシズちゃんと行き違いになってしまうかもしれないので人気の少ない路地裏の隅に座り込んだ。いつの間にかウィッグはどこかに落としたのかなくなっていた。

やっぱり着物とかはやめた方が良かったと今更後悔した。
携帯を開くと花火まであと10分――…。
シズちゃんからの連絡は何もない。

それでもシズちゃんに連絡をいれるべきだと考えて電話の発信を押した。
それと同時に『いたぞ』という声が聞こえて見るとさっきの4人のうちの2人がいた。
そいつらがいない方の道へ逃げた。
携帯に耳を押しあててはいるがコールするだけで一向にでる気配はない。

いつもならナイフで応戦するが今日に限って忍ばせてくるのを忘れてしまった。
あんなに浮かれていたのがミスだった。


いや、浮かれてていたのは俺だけだったのかもしれない。


そう考えたら息が苦しくなった。
ビルとビルの間を走り抜けできる限り遠くに逃げようとは思うがシズちゃんとの約束の場所からあまり遠ざかりたくはなかった。

するとサンダルに慣れていなかったためにくじいてしまい派手に転んだ。
物陰に隠れたが見つかるのは時間の問題だった。
電話はまだコールしている。
時間を見ると後5分。


シズちゃん、もしかして嘘だったのかな…?
ほんとは俺のこと、嫌いになっちゃったのかな…?
いや、嫌いだったのかな…?


いろんな考えが浮かんでは消えを繰り返したが最終的に出てきた答えは、



「ようやく見つけたぜ?おねえさーん」



顔をあげると男たち4人がいた。
どいつもこいつも厭らしい目をしていて気持ち悪かった。



「諦めが悪い奴って、嫌われるよ?それに、俺は男だし」



きっとこれを言えば諦める、最終手段だった。
すると男は笑って、



「へぇ男なんだぁ?でもこんなに綺麗だったら抱けるよ?俺ら」

「はっ――…?」

「だよなぁ?お前ら」



後ろにいた三人は薄気味悪く笑い全身に鳥肌がたった。


ずるずると後ろに下がるとビルの壁に背があたった。
殴ったりするのは俺は好きじゃない。
殴った時のあの感覚が気持ち悪くていつもナイフとかを使っていたが今はどうすればいい?
きっと殴ったって一撃では無理だ。
しかも俺より体格がでかい男4人だ。

安全策を考えるがいい案はでない。
唯一、ある希望はシズちゃんが助けに来てくれること―――――


シズちゃん以外の人に触られるなんて絶対に嫌だった。
起き上がろうとしたがどうも足がうまくいうことを聞いてくれず背中にビルの壁を伝ってまた座る体勢に戻ってしまった。
すると、さっきから話しかけてくる男が俺の前にしゃがみこんだ。



「あっれー?もしかして、怪我しちゃってるのー?これは好都合だね♪」

「いや…嫌だ!触るなっ、やめろ!!」



一人が俺の身体を抑え込み、二人がシュルっとネクタイを首元から取り両手を後ろでキツく結ばれ、もう一つは目隠しをされて何も見えない恐怖に襲われた。



「やだっ、外せ!!」

「んーどうする?やっぱり口もやっといた方がいいか、本当は喘ぐとこ聞きたいんだけど大声で叫ばれるのも困るし?」

「っ、いやだ!!シズちゃ、助け――んんっ!」



シュルっと音がすると口元にも結ばれた。

何も見えずただ不気味な笑い声だけがこの路地裏にこだましていた。



「それにしても、すげえこれだけでエロく感じるなぁ」

「そうだな、マジでこいつ男かぁ?」

「まぁ、確かめれば分かることだしな?」



首筋に手を置かれただけでぞわぞわとしてもがくが後ろにいる男が抑えているため動こうにも全くというほど動けなかった。

帯が解かれ俺の下半身に手が触れて布をよけると太股を厭らしい手つきで撫であげた。
何度も往復を繰り返し目が見えないためそこばかりに意識がいってしまって感じたくもないのにだんだん変な気分になってくる。

すると別の腕が俺の上半身の浴衣をおろして肌をその指がなぞり肩がビクンと震えた。



「こいつは本当に男だな」

「あぁ、でもよぉ、すっげぇこいつ肌がすべすべでよぉ白いし、本当に女みてぇなんだよ」

「あっれ?こいつの首元キスマークついてるぜ?」

「ははっ、男とこいつシたんじゃねぇか!」



周りの音が全てどうでもよくなってきた。
抵抗しても抗えない。
なら、もういっそ諦めた方が楽な気がしてきた。

するとドォンっと空を揺るがすような爆発音が響き渡った。
きっと花火の時間になり夜空にその大輪を浮かべているのだろう。


本当なら、今、シズちゃんとこの空を見ていたはずだったのになぁ――…。


でも今俺が見ているのは何もない、真っ暗な空間。
そして今の状況も真っ黒。
俺には黒がお似合いってことなのかな。

そんなことを考えていたら太股を弄っていた男が俺の性器を布越しにギュッと握った。



「んんんっ!んぅ!」

「ははっ、大丈夫だよお兄さん、そんなに強張んなくても気持ち良くなるからさっ!」



そう言うと布越しに擦りあげられてそこに熱がこもっていった。
それだけでなくもう一人の男ははだけて見えていた胸の突起を指でクリクリとされたり引っ張ったりされ、後ろで俺を押さえていたいた男も後ろから手を回し俺のもう片方の突起に触れ急激に熱が下半身に集まっていった。
そして片足を上げ下をグリグリと膝で押された。



「いいなぁー俺もしてぇのに」

「お前はもう少し見張り番だ、あとでヤらせてやるから」

「んんっ、んっ!んんぅ……」



感じたくない、触るな、いやだ、いやだ、いやだっ!!

射精しそうなのをなんとか抑え込んでいるがそろそろ本気でヤバかった。

浮ぶのはシズちゃんの顔だけで――…

目頭が温かくなり、俺は泣いているんだと気付いた。
でもいつものようにその涙を拭ってくれる、シズちゃんはいない。

そして性器の先端をグリっと押されてついに達してしまった。



「んぅんんんっ!!」

「あ、イっちゃった?そんなに気持ち良かったんだぁ?」

「やっぱ、写真撮る?」

「そこは動画だろ??はははっ!」



呆然としていて溢れてくるのは涙とシズちゃんの顔と後悔ばかりだった。

俺はシズちゃん以外の人に感じてイってしまった。


ねぇ…今の俺のこんな姿みたらシズちゃんは幻滅する――――…?







―――――…するよね。

自分以外の人とヤって俺は感じて達してしまったんだから。



ねぇ……まだ、こんな俺をシズちゃんは愛してくれる―――…?



この疑問に答えてくれる人はいなくて急激に俺の熱を冷ました。





そしてものすごい速さで何かが目の前を通り過ぎたような風がふいた。
それと同時に何かが倒れる音。


「て、てめぇえって――…お、おまっ」


そこまで言いいかけた男はグシャリと音を立ててビルにたたきつけられた音。
そしてすぐに別の奴も何か骨が軋むような音をたてて地面にたたきつけられた音。

そして残ったのは俺の後ろにいる奴なのだろう。
後ろの奴の身体が酷く震えているのが分かった。


「ひっ、や、やめっ―――」

「臨也もよぉ…そうやってお前らに言ってたのに無視したよなぁ?じゃあ、俺も無視してもいいよなぁああ!!!」


叫び声が出る前にその男も顔面を殴られたようでもの凄い音がした。


こんなのするのは、あいつしかいない。
ずっと目隠しの下で浮かべていた人物。




『シズちゃん―――…』










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