静臨*長編
□繋がり
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俺の仕事は情報屋。
その取引で体を売るのは珍しくもない。
でも今はシズちゃんだけだ。
体での取引はもうしないと心の中で決め、いくら常連でもお得意様でもシなくなった。
「で…今回の依頼なんですがね…」
「分かってますよ、四木さん」
もう随分四木さんとのやりとりは長い。高校生の時に初めて知りあい、初めて抱かれた男でもあった。
その時は流石にヤクザとかとつるむだけの金はなく仕方なくからだではらった。
でも今はそれなりに金はあるしうまくいっている。
「じゃあ俺が頼んでいたことはどうでしたか?」
「うまくいきましたよ。この件に関しては少々手間取り、危険もあったので報酬は高いですよ?」
「大丈夫ですよ。またいつもの口座にいれておくんで」
いつもこういう取引や話をしている時は事務所ではなく粟楠会が管理している車の中でだった。車は横道に入り停車した。
「では…」
「折原さん」
呼びとめられ振り向くのと同時に腕を強く引っ張られそのまま体勢を崩し四木さんの上に覆いかぶさるような感じになった。
するといきなり首元に痛みが走った。噛まれたのだと分かったが抵抗できなくそこを強く吸われた。
「っ……、四木さん俺もう、そういうことはやめたんでっ」
「知っていますよ」
そう言いながらも腕を抑える力が弱まる気配はなく別の場所にまたうっ血を施した。
シズちゃんと付き合いだして初めて他の人に痕をつけられてしまった。
「四木、さ…」
今度はぐっとからだを押され反転して背中にシートがある状態になった。
「っ…すいません!!」
このままだと危険だと判断して四木さんを強く押してすぐさま車から降り駆けだした。
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「おや…逃げられてしまいましたね。まぁいいです。また捕まえますからね…」
その表情は笑っているのに冷たい鋭い目をしていた。
そしてその車はまた何処かへと走り去った。
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