静臨*長編

□愛の痕
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目が覚めるともう辺りは暗くなっていた。
横を見るとスースーとシズちゃんの寝息が聞こえる。


のどが渇いた……。


とりあえずシズちゃんを起こさなように隣から起き上がり落ちていた服を拾い上げ着た。

携帯を開き時刻を見ると8時だった。
はぁ…とため息をこぼしてからキッチンに行って水をゴクリと飲んだ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




数時間前―――…



昼間なのにいきなりシズちゃんは俺の家にきた。とりあえず家の中に通した。


それが失敗だった。



「?どうしたの、シズちゃん?」



聞くとシズちゃんはたった一言……




「ヤらせろ」

「…ごめん理解できないんだけど、ていうかいきなりヤらせろなんてどこの盛んな犬だよ!?」

「いいじゃねぇか、ここ最近してなかったんだから」



そう言うと俺を寝室に連れていき押し倒して今にいたる。

いつもより少し激しい行為だったがもう慣れたのか腰に痛みはなかった。



ていうか、これじゃあ俺ただのシズちゃんのヤらせ機みたいじゃん……

俺じゃなくてもいいんじゃないの――?



こんなことを考えていても今の状況が何か変わる訳がない、余計悲しくなるだけだ。


気を紛らわせるために洗面所に行って顔を洗った。
ふと鏡を見ると首筋や鎖骨あたりに赤い痕がいくつもあった。



「ちっ……しずちゃんいつも痕つけるなって言ってんのに…」



念のため後ろを向きもうひとつあった鏡でそれを鏡に映して背中を見るとうなじのあたりには痕はなかった。


「はぁー…」


こういうのがあると嫌な客が来た場合対処に困ると言うのに…
だからコートを着て痕をいつも隠している。
明日の仕事も厚手のコートを着るはめになった。



イライラしながらさっきいた部屋に戻るとまだシズちゃんは気持ちよさそうに眠っていた。
近づいてシズちゃんの顔を覗き込んだ。
こうやって見ると顔は整っててかっこいい。髪を撫でると思っていたより硬くなくサラサラとしていて驚いた。



「シズちゃんのくせにこういう所は気にしてんのかな?」



そしてふとシズちゃんの首筋に目がいった。そこには何の痕もなく綺麗だった。


そして俺は考えた。





俺の苦労をシズちゃんにもたっぷり味わってもらおうと――…










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