静臨*長編

□覚悟しろよ?
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<臨也視点>


まさかシズちゃんに追いかけられてる途中でドタチン達に会うとは予想できなかった。
しかも狩沢さんにまで捕まってこんな格好をさせられるなんて思ってもみなかった。
やけにスカートはさっきはいていたものより短くて慣れないし何より目立つのが嫌だった。
こんな格好をしていたらシズちゃんに見つかってしまう確率が上がるからだ。
それにかなり長居したからたぶんすぐそこまできているかもしれない。

最初はこの女の姿を使ってシズちゃんの驚く反応を見ていみたいなとは思っていたけどやっぱり恥ずかしすぎる。
帰ろうと考えていた矢先、シズちゃんが俺の匂いに気づいたらしく追いかけまわしてきた。そして帝人君達に会ったりドタチン達にも会ったが誰も俺が折原臨也だということには気づかなかった。

いや、ドタチンは勘がいいからまだ油断はで
きないけど…。

そんなことより一刻も早くマンションに帰ることに専念しようと決めた。一々着替えてたら時間がもったいないからこの服のままでいるしかない。



「あの…狩沢さんでしたっけ、この服もらってもいいんですよね?」

「うんオッケーだよ。あれ?もしかして気に入った??よかったらまた今度あげるからさ、コスプレしようねー!」

「はっ…、はぃ」



流石にもうこの服をきることはない。しかも女の姿ではなくなるからもう一生狩沢さんにこんなことはされないだろう。
引きつりながら精いっぱいの笑みを浮かべた。



「ぁの…じゃあ、私これで…」



別れを告げようとした瞬間ものすごい衝撃音が通りに響きわたった。
どうやらそれは自動販売機が地面に突き刺さる音だったらしく地面に自販機が歪な形で倒れていた。
あまりに唐突すぎる登場で足が動かなかった。こんなことできるのはあいつしかいないのにその場で固まってしまった。
後ろを振り返りたくなかった。
とりあえず狩沢さんの後ろの陰に隠れて唾を飲み込んだ。



「よぉ、門田。臨也見なかったか…?」



ドタチンに怒ってないようにあくまで冷静に尋ねているようだったが全身から怒りが滲み出ていた。



「いや、見てねぇけど…なんでだ?静雄でもあいつを見つけられねぇのか?」

「あぁ…朝からくせぇにおいがしやがんのに見つかんねぇんだ。あっちからにおったりこっちからにおったり、うろちょろしやがって……!!」



早く立ち去るのが一番だと冷静になり始めた自分がそう告げた。
そろっと後ろに一歩下がった瞬間シズちゃんが俺をじろっと見てきて肩が震えた。



「ちょとー、シズシズが恐い顔してるから怖がってんじゃん」



心臓が跳ねた。


見られているだけでばれたんじゃないかってドキドキする。



「あーこの人はなんか臨也の従姉なんだってよ。臨也と似てるかもしれねぇが女だしな」

「臨也の従姉だと?」

「……はぃ」



消えいりそうな小声で返事をしたがシズちゃんの睨んでくる目は変わらない。
が―――…



「そうか。悪かったな」



いきなり謝られて驚いて瞬きを何度もした。
なんとなくこれ以上目を合わせられなくて下を向いた。
早くこの場から逃げ出したかった。ばれる前に帰らないと恥ずかしすぎて死んでしまいそうだったから。



「あの、ではこれでっ!」



一礼をして反対方向を向いた。
これできっとばれない。そう確信したはずだったのに急に体が宙に浮いた。



「えっ、な、何!?」



目の前には見慣れたバーテン服があった。俺を担いだのはシズちゃんだということに驚きで声が裏返った。



「わりぃな門田。ちょっとこいつ借りてくぞ」

「は?静雄!」



そのままシズちゃんは俺を肩に乗せたままぐんぐん進んでいった。
身体を動かそうとしても女の力ではいつも以上に力が出せないことが今わかった。いや、男でもきっと無理だと思うけど。



「離して、降ろしてっ!!」



抗議しても相手は聞く耳を持たず街中を颯爽と歩くから周りの人たちの視線が痛すぎる。
すれ違うものはスッと横に避け見ないふりをしていた。
バーテン服を着たやつがゴスロリを着た女を担いでいるなんて関わりたくないと思うのが普通だ。

気付くと周りはいやらしいホテル街で焦ったが今の自分ではどうすることもできない。
どこかのホテルに入りチェックインをすばやくして担がれたまま部屋に入った。
横をちらりと見るとピンクのフリフリが多いという部屋の内装で思わず言葉を失った。
部屋の奥にどんどん進んでいきベッドの上に落とされその上にシズちゃんが乗っかてきた。そして、いきなり確信をついてきた。



「お前、臨也だろ?」

「――っ、だ、だから従姉ですよ?」

「馬鹿野郎。嘘ついたって、てめぇのにおいとか雰囲気で分かるんだよ」



流石、化け物――とは言わないでおいた。
このままだと何されるか分かったもんじゃないから。



「はぁっ、そうだよ。俺の負けだ、だから解放してくれない?」



両手をあげてそう告げたが向こうは受け入れないことは分かっているけどこの姿じゃまともな反抗すらできないからダメもとだったが言ってみた。



「解放するわけねぇだろ、朝からすばしっこく動き回りやがって…」



俺が思っていた通りの答えが返ってきて激しくさっきまでしていた自分の軽率な行動に後悔して深いため息をついた。







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