ぽっぴん

□第1話
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京都…



おれの両親が産まれて育った場所



小さい頃に来た覚えがある

それからちょくちょく遊びに訪れたことのあるここで今日から生活するんだ




『あ、そういや…』



引っ越し業者が送ってくれた荷物をこれからお世話になる元々父方のじぃちゃんとばあちゃん住んでいた家の中で整理している時にふと思い出した



『志摩のみんな元気してっかな』



両親同士が昔からの知り合いでこっちに遊びに来たときには志摩の兄弟達にいつも遊んでもらっていたな

後で挨拶行くって言ってたしおれも付いていこう


「鹿ー!荷物の整理終わったか?」



『うん、今丁度』



床は畳、柱は木で部屋は襖でしきられているいかにも和といった感じの家に響く父さんの声

どうやら近所に挨拶回りに行くようだ













どうもお邪魔します
越してきました百羅言います。
今日からよろしゅうたのんます

父さんと母さんがいつもとは違った口調になっていて、やっぱりここが二人の地元なんだなぁと感じた

ずっと東京に居たので標準語が身に染みている鹿にとっては両親が京都の方言で喋っているのは少し珍しく聞こえる


「さてと、じゃあ次は八百造んとこに行こうか」


「そういえば久しぶりね。志摩の皆さんに会うの、鹿廉造くんたちのこと覚えてる?」



『おう!ちゃんと覚えてる。』



最後に会ったのはもう随分と前だったっけか
確かまだおれが小学3年か4年のときぐらい
今中学三年生だから約六年ぶりなわけだ
おれのこと覚えてくれたらいいな


そんな会話をしながら歩いていると目的の志摩家の前まで来ていた



「こんにちは」



『お邪魔します』



ガラリと扉を開けて中にはいる両親に続いて鹿も久々の志摩の家の敷居を跨ぐ


声をかけると返事が帰ってきて足音が向かってきた



「あら!百羅はんやありまへんか、引っ越し今日どしたんやね。」



出迎えてくれたのは志摩の奥さん、廉造たちの母親朱音さんだった



「まぁ!!鹿くん!?男前になって…まぁまぁ」



「そうやろ?かいらしてしゃぁないんや」



『ちょっ母さん///そこは軽く流すとこだろ!』



「ふふっ弥生(やよい)は相変わらずの親バカやね」



「あはは、よういわれる」



なんだろう…
自他共に認める親バカとか、話題にされるこっちの身にもなってほしい
つか、いい加減息子の自慢話を止めてください
本当にお願いします…!







「そういえば八百造は居らんの?」



「あぁそうやったね。
あなたー寿士(ひさし)はん来てくらはりましたよ」



朱音さんが家の二階へと声をかける、が返事がない



「?……すまへんねぇ、あの人書斎におらはるんや思うんやけど」



「あ、ほやったら無理に呼ばんでもよいですえ。きっと仕事やってんやないかな」



「いや、今日はお勤めは休みやゆうてたさかい、本でも読んでんやないやろか。それにあの人寿士はんが来てくらはんの楽しみにしてはったし。ちょっとよんできますさかい、上がってそこの部屋で待っといてください」



「そ、そうでっか。じゃそうさせてもらいます」



朱音さんに促され応接間に入らせてもらい

三人で待機する

すぐに襖が開けられて、顔に刺青のはいった垂れ目の男性がやって来た



「おぉ!寿士久しゅう。弥生さんも鹿くんも久しぶりやね」



「いやぁ、八百造相変わらずな感じやね。
あぁそうやった、八百造やのうて所長てゆうたほうがよいか?」



ふざけた風に言った父さんに八百造でよいよ、と笑いながら返す



「して八百造、なんや大事なことて」



「ん、ああそやったな。」



『?』



仕事関係の話だろうか、八百造さんもおれの父さんも祓魔師を職としているからきっとこっちに越してくることになったのもそれ絡みなんだとは思っていたが、やっぱりそうだったんだな



「あら、お仕事の話?」



「おん」



「じゃあ私たちは外に出ておいた方が良さそうね」



「えぇ、そうしましょか。あっそうや!昨日美味しい和菓子買ってきたんよ。弥生和菓子すっきゃろ?お茶しやへん?」



「おぉ!ええの!?
そんなら遠慮なく頂くわ」



「鹿くんも一緒にどう?」



『えっいいんですか?』


勿論やっと言ってくれた朱音さんのお言葉に甘えて和菓子を頂くことに


父親二人を残しおれたちは違う部屋へと移った
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