短編

□気付かぬままに
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「おう、有里じゃないか。」


「あの、真田先輩…」


最初は''仲間''だから、''先輩''だから


「ん、なんだ?」


「もしよかったら、…一緒に帰りませんか?」



こんなことになるなんて思わなかった。



…最初変だと思ったのは、タルタロスに上っている時。
シャドウに攻撃を食らいそうになりそうになった時、真田先輩がギリギリのところで助けてくれた。
その時の真田先輩はいつも以上にかっこよく見えて、何故か胸がドキドキする。
それ以来、何故か、真田先輩と会っただけで、ドキドキしてしまうようになった。
理由とわからず、何故か。


次に気がつけば、真田先輩を目で追いかけていた。
学校の廊下で会ったときや、寮に帰ってきたときでも。
何故か気になってしまう。
考えても答えが見つかるはずもなく、不思議に思ったことは、何回目だろう。
それでも、未だ分からないまま。


この前学校で先輩のところにファンの娘たちが迫っているのを見て、胸が苦しくなる。
自分でもわからない、何で苦しくなるんだろう。
前はこんなことなんて、全然なかったのに…。


散々悩んで、自分だけじゃあ、分からないため誰かに聞いてもらおうと、放課後、ゆかりを誘って相談した。
相手が真田先輩ってことは話さず、何故か目で追ってしまうこと、女の子と一緒にいるのを見て、どうして胸が苦しくなるんだろう、と聞いてみた。
するとゆかりは

「…えっ、それって」

案の定、驚いていた。

「まさか公子が、そんなこと言うなんて…」

「お、可笑しいかな?」

「ううん、そうじゃなくて、」


そこまで言うと、ゆかりは優しく微笑んで言った。


「そういうのって羨ましいなって…」


「…そうかな?」


「私は恋なんてしたことがないからね…。」


「…こ、い?」


私はゆかりの口から出た言葉に思わず声が震えた。


「えっ、自覚なかったのっ!?」


信じられないという顔でゆかりはこちらを見た。


「い、や…薄々は感じてたんだけど、まさか本当にとは…。」


「…いつも思ってたんだけど、何かとこういうのには公子は疎いよね。」

苦笑した顔でゆかりは私を見て言った。






ゆかりと帰宅したあと、真っ先に自室へと足を向けた。


パタン…


自室にはいると、制服のままベッドへとダイブした。


…これって恋なのかな?
最近先輩が気になるのも?
何故か先輩を見るとドキドキして、それと同時に胸が苦しくなるのも?
ゆかりにさっき言われたことを思い出して、納得している自分がいる。

ーそっか、恋なのか。
やっと答えを見つけた。


あっ、でも…


「どうすればいいんだろう…。」


伝える?それとも伝えない?
でも、もし思いを伝えてしまったら、今までのような関係を壊しかねない。
それだけは流石に避けたい。

それなら、いっそ…

言わない方がいいのかもしれない。
どうせこの思いが叶うことなんて、ない。
今は先輩後輩、それだけで十分だ。


そう思いたい。



でも、それと同じくこの先輩と後輩という関係を壊して、真田先輩の恋人になりたい。


矛盾している思いに、思わず私は泣きそうになった。



「本当に、どうしよう…。」



→あとがき
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