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□上下関係
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「あ、かいちょ」

「おはようございます、委員長。」


私は『部下』に声をかけると、席に着いた。


「ふふっ、今日も冷たいね。会長。」

「今日もうざったいですね委員長。今日までの書類、ちゃんとおぼえてる?」

「あ、タメになった。おぼえてるよ、これだろ?」


幸村君は、私の机に纏わりつきながら一枚のプリントを見せてきた。

…完璧に書き込んである。さすがは、学級委員長。
生徒会長として、少し口惜しいかもしれない。


「……放課後までに先生に提出してくださいね。」

「あ、また敬語。」

「私で遊ぶのやめてくれない?」


私はイラッとしながら言った。

それでも、心のどこかでこの笑顔を許してしまう自分がいるから驚く。

だって、


「別に遊んでなんか。」

「だったらどいて。私、成績重視だから再来週までの宿題を明日までに提出したいの。」


私は、


「私の机のそばにいないでもらえる?気が散る。」


これでも、


「…俺のこと、好きなくせによく言うよね。」


彼が好き、だから。


「なっ……!!」

「あれ、図星?」


とぼけるように笑う彼は、いつものように爽やか過ぎる笑顔で。

私は初めて、彼の前で赤面するという失態を犯した。


「あ、会長でも顔赤くしたりするんだ。いつも余裕な顔してるから知らなかった。」

「なっ、何を根拠に!」


そしたら幸村君は、ニコって、笑みを深くして。


「根拠…と、しては。俺も会長のことが好きだから、かな?」


生徒会長と、クラスごとの学級委員を束ねる学級委員長が付き合っているという噂は、二時間後には学校中に知れ渡っていた。

やばい、どうしよう、これはすまして敬語なんて使っていられない。






『上司』には敬意を払いましょう
(ずっと前から気付いてはいたけれど)(待つのがこんなに焦れったいことだとは知らなくて)


 

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