現代 221B
□apology
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くだらない。
実にくだらない。
全くもってくだらない!
「おい、シャーロック」
「君達警察はどれだけ無能なんだ!」
僕の一言で周りにいた警察官や刑事、監察官が一斉に視線を向けてきたが別に気にしない。
「何故、現場近くの郵便ポストの存在に気付かないんだ!どうして電話で聞いた時に「近くにポストがある」と言わない!君には想像力がないのか?知識もない、想像力もない!君には一体何がある?」
レストレードが慌てたように追いかけてくるが、それすらも苛々し歩くスピードを速める。
「さっきからお前は何様だ、変人!」
「煩いアンダーソン!僕の視界に入るな、視界と感性が穢れる!」
喰ってかかったアンダーソンを一蹴しながらiPhoneを操作する。
必要な情報を収集しながら無能な警察に必要な情報を提示していく。
「犯人は本当はもっと人気のない場所で殺すつもりだった、しかし被害者の予想外の抵抗を受けて突発的に殺した。その際に犯人は凶器をどうしたか?」
「それで郵便ポストに入れたわけか?」
「勿論!犯人は返り血は浴びなかった筈だ、それは被害者の着ていた服が証明している」
僕は立ち止まると、レストレードにiPhoneの画面を突き出す。
「被害者の死亡推定時刻は午後2時30分から4時の間。あの郵便ポストの収集時間は3時15分。その前後の時間に被害者と犯人を郵便配達員が見ていないことから犯行は3時15分から4時までということになる」
「しかし、ポストの中に入っていた刃物は大量生産品で指紋もなかった」
「観察力も注意力もない人間がただ凶器だけ見たらそうだ」
レストレードの片頬がひくりとひきつった。
「具体的に言おう。犯人は先程の郵便ポストがある道を通勤路にしている会社員、30代。身長は160センチで小太り。右足に体重をかける癖があり、右足の踵部分が外側から内側にかけて擦れている運動靴を履いている男だ」
早口についてこれないレストレードが慌ててメモを取る。
とにかく遅い!
「どうしてそんなことが分かったんだ?」
「観察と想像力だ。情報を僕はちゃんと呈示したんだ、それを裏付けていくのは君達だろう?」
語尾と同時にレストレード警部の携帯電話が鳴った。
「はい、レストレード」
これで僕の役割は終わった。
不思議な事件は単に警察の無能さが招いた事態ということが不服で仕方ない。
「シャーロック事件だ」
「場所は?」
電話で会話しながら、僕に話しかけてくるレストレード。
その表情は次第に堅くなり、強張っている。
「場所は……ベイカー街221Bだ」
僕の中でその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
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