聖典 221B

□根拠と証拠
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「レストレード警部から紹介されて、こちらをお伺いしたのですが……貴方がシャーロック・ホームズさんですか?」

 依頼人は僅かに頭を傾げながら、おずおずと探偵に尋ねた。

「えぇ、そうですよ。貴女がウェリア・エルトニーさんですね」

 レストレード警部から手紙で紹介された依頼人。

 それは全員、右半身に火傷を負った奇妙な自殺者の謎。

 その家族の一人が有名な私立探偵であるシャーロック・ホームズの元に来たのが、ホームズが手紙を受け取ってから僅か半日。

「どうぞ、こちらへお掛けください」

 ホームズが示す椅子に恐る恐る腰をかける依頼人。
 しかし、その行動とは裏腹に一つ一つの所作はしっかりとしており、淀みない。

 その時扉が勢い良く開いた。
 旧友であり、相棒であり、僕の伝記作家であるジョン・H・ワトスンが入ってきた音だった。
 英国紳士の彼がノックもせずに入ってきたのは、単に依頼人がいるとは思っていなかったのだろう。

「あぁ、ホームズ!すまない、依頼人か」

 案の定。
 慌てて引っ込もうとする相棒の腕を急いで掴み、依頼人の前に出す。

「こちらは相棒のワトスン博士。彼は信頼のおける相棒ですので、彼の前では僕の前と同様に話してくれて構いません」

 早口で捲し立て、相棒の背中を押すと同時に横目で依頼人を観察する。
 依頼人は控えめだが、品定めをするような目でワトスンを見ていた。


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