魔女は笑わない

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『問わせていただきます
 貴方が私のマスターでしょうか?』


眩しい光が包み現れたのは言峰綺礼が自分の意思で呼んだ
アサシンの座につく【ハサン・サッバーハー】


だけのはずだった


しかし目の前には1人の少女が綺礼を見つめていた


『質問を変えさせていただきます
 貴方が聖杯戦争、最後のマスターですか?』


無表情で発する少女の言葉を聞いて綺礼は更に困惑した


(私は、最初のマスターのはずなのだが)


師に命じられ、綺礼はかなり早くから情報収集の為にアサシンを召喚した
だから自分が最後のマスターになることは絶対にない


(それより、この少女は一体・・・)


少女は未だ綺礼の言葉を待つようにじっと綺礼を見つめていた


『・・・マスター
 迷惑でしたら私は違うマスターの元へ行きますが』


違うマスター
困惑した綺礼はとりあえず師である師に相談することにした


「アサシン
 師を呼んでこい」
「はい」


少女を見つめたまま自分のサーヴァントに命ずるとアサシンの気配はすぐに消えた


(さて、どうしたものか)


少女は深い黒い瞳で綺礼を見つめていた
髪は瞳と同じ深い黒で少しくせのある
服装は体を隠すようにきっちりと着ており、また深い黒だった
唯一色が違うのは肌を晒している部分だけ
まるで日を浴びたことのないようなくらい白い肌をしていた


「・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
「私は言峰綺礼
 アサシンのマスターだ」


黙っていてもしょうがない、と思った綺礼は自己紹介を始めた
少女は相変わらずの無表情で呟いた


『私は魔女
 聖杯戦争において魔女の役目を担う者』























「魔女・・・」
「ああ
 今回の聖杯戦争から加わった者だ」


アサシンに呼ばれ、綺礼の元に行くとそこには1人の少女がいた

魔女
さきほども言ったように今回から加わった役割で、マスターやサーヴァントに魔力供給、及び聖杯戦争の援助をする者だ

しかし・・・


(こんなに幼いとは)


時臣は自分の娘達とそう歳が変わらない、いやもっと幼いであろう少女を見てそう思った
少女は無表情で綺礼を見つめている


「とりあえず場所を移動しよう
 そこでゆっくり説明する」
「わかりました」


魔女は最後のマスターに与えられるはずだった
それが最初のマスター、綺礼になぜ与えられたのかはわからない
だが


(我々が有利にたつ可能性が上がったことには変わりはないだろう)


時臣はこれから起こることに期待し笑みを浮かべた




















「さて、魔女についてだが」


師が少女、魔女について話している間
少女はまるで他人事のように綺礼の傍らに立っていた


「座らないのかい?」


師がそう聞いた時も少女は無表情で


『私のような者に気を配らなくて結構です
 私は魔女
 マスター、及びそのサーヴァントの道具でしかありません』


と応えていた
これには綺礼も師も驚き目を丸くさせたが、少女は何も気にせずそのまま立ち続けた


(この少女はどういう人生を歩んできたのだろうか)


まだ幼いだろう少女の過去を想像する
しかしそんなもの思いつくはずもなく考えることを放棄した


「とりあえず彼女のことは教会と相談して決めよう」
「そうですね
 私もそれがいいと思います」
「今日はもう遅い
 連絡を入れ明日話し合おう
 では彼女を部屋に案内しよう」
『結構です』


少女は師の言葉に間髪入れずに応えた


「しかし」
『私のことはお気になさらず、お休みください』


師から聞いた話しによると、魔女はサーヴァントのような者ではなく我々と同じ人間だという
ただ違う世界から聖杯に選ばれてきた、というだけで基本的に我々と同じように休息が必要なはずだ

しかし少女はそれを拒否した

これはどういうことだろう


『私にそのような気遣いは必要ありません
 私は外で休憩を取らせていただきます』
「しかし」
「師の厚意を無駄にするというのか?」


綺礼がそう言うと少女は始めてぴくりと反応した


『そういうつもりではございません
 しかし』
「いいんだよ
 まだ聖杯戦争は始まっていない
 ゆっくりするといい
 そういえば名を名乗ってなかったね
 私は遠坂時臣だ
 君は?」
『・・・・・・・・・・・・』


少女は師を見つめたまま黙ってしまった


『名前は、ありません』
「え・・・」
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