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□僕らの日常 1
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「杜山さん」
「は、はいっ!」
カタン!と椅子を鳴らし、しえみが緊張した顔で教壇の雪男の側に向かう。
「少しずつ名前は覚えて来たようですが、まだ癖が抜けませんね。惜しいです」
「…はい」
点数を見て顔を曇らせたしえみに、「ですが」と付け加え少し頬を緩める。
「確実に正式名を覚えて来てますよ。頑張ってますね」
雪男の微笑みに、しえみの顔も弛む。
「頑張ります!」
そう言って席に戻った。
次々にテストを返す。
実力がある者、今一歩な者、確実に点数を伸ばしてきてる者…自分の授業は少しずつでも皆に届いていると、雪男は胸を撫で下ろす。
…一人を除いては。
そう彼の頭痛の種、双子の兄だ。