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□僕らの日常 1
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カツカツと靴音が響く廊下に一人、頭を抱えて歩く生徒…ではなく教師がいた。
大人が見れば生徒だと言い張るであろう風貌は、成る程15歳の少年にしか見えないが、彼の抱えている悩みは生徒のソレではない。
彼は、悪魔薬学の一年生担当『講師』なのだ。
脹ら脛まですっぽりと隠す程長い黒の祓魔師のコートの裾を翻し、眉間に皺を寄せて歩く姿は声をかけ辛い。
彼、奥村雪男がこんなにも胃が痛い思いをしているには訳がある。
悪魔薬学の授業を行う為、立ち止まった教室の扉の前で、彼は一番深く一番長い溜め息をついた。
「それでは授業を始めます」
それほど広くもない教室には、数えられる程の生徒…と言っても、講師の自分と同い年の少年少女ばかりだ。
新任講師として教壇に立ってから、はや数ヶ月。
何度も繰り返してきた一言を、また口に出す。
「この前のテストをまず返します」
溜め息を飲み込みつつ。