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□聡明な君は、何を想う
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「成歩堂……済まない…」


急にあいつの口から漏れたのは謝罪の言葉で。

思わず僕は「ふぇ?」なんて間抜け極まりない声をあげてしまった。


事態を確認するために一度今までの出来事を振りかえる。
時は週末の夜。場所は御剣の部屋。
恒例と化した「週末は御剣の部屋で二人だけでゆっくりする」という最中のことだった。

そこで、なんでいきなり謝罪の言葉が出るかが、分からない。



「だから、済まないと言っている。」


それしか言わない御剣に僕は最悪のことを想像してしまって、思わず息を飲んだ。


「また、海外研修行くのか?それとも僕の他に好きな女の子ができた、とか…」


自分で口にしておいて、もしそうだったらどうしようと不安になる。


すると御剣は大きくかぶりを振った。


「違う…違うのだ!!近々海外に行く予定はないし、ましてや君以外に心を奪われるつもりもない!!」


その言葉にほっとしたのも束の間。


「しかし……」


その接続詞を呟いた途端、またしても御剣は俯いてしまった。



「しかし…なんだよ?」


御剣がこんなに話しにくいことなら話さなければいいのに。
……でも、言うと決めたら絶対引かない御剣のことだから、僕は諦めて話を促すだけにした。



「…その……成歩堂。」

「はいはい」

「私が今から何を言っても…怒らないか…?」


いきなり何を言い出すかと思えば、真剣な表情でそう聞いてきた。


「え……」

「成歩堂……頼む、答えてくれ。」


御剣の灰色の瞳には一抹の緊張と……不安?


「……うん。僕は構わないぞ。」

「……本当に?」

「いっつも法廷で人を驚かせたりピンチに陥れたりすること言う人が何言ってんだか…。」


僕が呆れた声でそう言うと、御剣は深呼吸をひとつ。


その後に。






「…成歩堂……君のことを……その、抱いても………いいだろうか?」





言葉をつっかえながらも、しっかり、はっきりそう言った。



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