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□悪態少女、真宵。
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「弁論大会、ねぇ…」

あたしは、ぼそっと呟いた。
時は六時間目、場所はあたしが通っている高校の体育館(因みに古くて狭くて寒いっていう三拍子付き)。

壁にはでかでかと「弁論大会」と上手いのか下手なのかよく分からない筆字で書いてある紙。


あたしの高校では、年に一度弁論大会なるものを催す。

自分の思ったことを作文に書いてクラス代表一名が体育館で発表するという…まぁ、話し手も聞き手も楽しくない行事。


幸いあたしは代表なんかに選ばれなかった。
でも、聞いている方も正直、きつい。




『だから私達はこの豊かな自然という環境に感謝して、高校生活を送るべきだと思います。』



…そんな事本気で思っている人がどれぐらいいるだろう。
あたしも確かに、倉院での生活は好きだ。

でもそれと引けをとらないくらい、都会の…なるほど君やはみちゃんや御剣検事との生活も好きだ。




『私達はこのことを忘れないで後世に伝えるべきだと思います。』



忘れたい人だっているかもしれないじゃん。
あたしだって、あのコロシヤに捕まえられたことを覚えておきたくはないし、ましてや後世になんて残してほしくない。

あの事をなかったことにしたい、とは思わないけどさ。




弁論大会なんて名ばかり。

作文選ばれなかった私が言えたくちではないけれど、でも。
そんな綺麗事を並べた意見より心に響く言葉を、あたしは知ってる。




『僕を信じてくれた御剣を、僕は信じている』


『力になれるのは、本当のあいつを知っている僕だけだ。』



心の底から、信念を持って告げられた言葉を、身近で知ってるから。


だからあたしは心の中で弁論をしてる生徒に向かって思い切り叫ぶ。





「異議あり!!その意見、ムジュンしてるよ。」








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