宇宙蛙物語
□クルル 「あなたは私の憧れです」 であります!
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「ひどいよ皆・・・なんで僕1人で行かなきゃなんないのさぁ〜」
円盤の中とは思えないほど長く続く廊下を、ドロロは1人べそをかきながら歩く。
無事に潜入することの出来たドロロはまず、ちょうど通りがかった乗組員を気絶させ、その服を借りて堂々と情報収集を始めた。
文句をたれ、半べそをかきながらも、やはり元アサシン。ここまで誰にも気づかれず、完璧に、そして鮮やかに事を運んでいった手口をみると、やはりケロロたちの人選は正しかったといえるだろう。
「・・・いかん、今は任務中。気持ちを切り替えてしっかりせねば」
ドロロは自分に言い聞かせるように呟くと、先ほどの情けない顔を一変させ、いつも任務を行なう時の引き締まった表情になった。その時、通路先に乗組員がふたり雑談しているのが目に入る。
(まずはメテア殿の居る場所から探るでござるか・・・)
ドロロは何気なく2人に近づいていった。
「あの・・・お話中申し訳ないのですが」
おずおずと話しかけると、2人は話を中断させてドロロのほうをみる。
「ん?あぁ、なんだ?」
「その、メテア班長に用事があるのですが、今はどちらに?」
今回、ワルルの宇宙船の乗組員はほとんどが情報部の部員らしい。情報部は規模が大きく、部員は三桁いっており、全ての顔を覚えているのはほとんど居ないという。
ちなみに、部員全ての顔を把握できているのは幹部のワルル少尉と、現班長メテアぐらいだと言われているそうだ。乗組員は疑う様子も無く、あっさりと場所を教えてくれた。
「メテア班長ならワルル少尉に呼ばれて書斎に居るよ」
「ワルル少尉の書斎・・・」
ドロロは顔をしかめる。襲撃が来たときに備えて、なにか情報はと思って進入してきたのだ。今ワルルと顔をあわせるのは非常にまずい。
どうしたものかと考えを張り巡らしていると、乗組員は顔を見合わせ、ドロロをまじまじとみつめる。
「書斎にまでいくのか?」
ドロロはただ頷くと、2人はそれと同時に爆笑し始めた。
「・・・おまえ、もしかして新人か?」
なにが起こっているかわからないドロロに、乗組員のうち1人がまだ苦しそうにしながら確認した。ドロロは内心バレたのではないかと焦りながらも、表情には決して出さず、ポーカーフェイスで淡々とこたえる。
「はい、今年は入ったばかりです」
それを聞き、二人は目を合わせると理解できたと何度か頷いてから意味ありげに笑った。