シリーズ

□スイートバレンタイン 番外編
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「あなた」
娘を見送った後、アコ達が帰っていった方向をじっと見つめる夫に、アフロディテは話しかけた。目線はメフィストの手の中の包みにあった。
「バレンタインデー・・・か。人間界には素敵な日があるのね」
「そうだな」
「アコも女の子らしくなったわね。手作りなんて」
アフロディテは目を細めて、優しげに微笑んだ。
「ああ・・・・・・」
メフィストは何処か力なく、曖昧なを返事した。
「あなた。アコが行ってしまって寂しいのはわかるけど、気持ちを切り替えないと」
アフロディテはメフィストを諭すように言った。
「いや、そうじゃない・・・・・こともないけど、これは違うんだ・・・・・・」
「え?」
支離滅裂で、おまけに口ごもるメフィスト。その様子を、アフロディテは不思議そうに見ている。
「だから、その・・・・・・」
メフィストは意を決したように、アフロディテを見て、口を開いた。
「アコは本命とやらを渡すのだろうか!?」
「・・・・・・はい?」
しばしの沈黙の後、アフロディテは聞き返した。
「セイレーンさんはファルセットに、本命とか言うものを渡したと、アコが言っていたんだ。本命とは、大事な人に想いを伝えるためのだと言っていた!」
「・・・・・・それで?」
「だから!アコがもし誰かに本命をあげたりしたらどうする!?」
「いいことじゃない。アコに好きな人ができるなんて。それに、あげたからといって必ず交際するわけではないわ」
「イヤイヤイヤ、よく考えなさいアフロディテさん。アコは可愛い。信じられないほど可愛い。何よりも、世界一、宇宙一可愛い」
「確かに、そうね」
「そんなに可愛いアコに本命をもらって、振ったりする奴がいるか!?そんな奴私が許さん!!!」
「・・・・・・なら、アコに恋人ができてもいいの?」
「良いはずがない!!!!!!」
「どっちなのよ」
「ああああ、心配だ!!!」
頭を抱え込むメフィスト。
そんな夫を見て、飽きれかえるアフロディテ。
(アコの方が、よっぽど大人ね・・・・・・)
心の中で、彼女はそう思った。そして、
(アコ、頑張りなさい。あなたの気持ち、届くと良いわね)
叫ぶメフィストを無視し、娘に密かにエールを送るアフロディテだった。
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