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□陸酔い
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あちらできらり、こちらできらり。飛び交いながら光が反射する。
波、風、光、どいつもこいつも自由気まま、誰がなんと言おうと、行きたい場所に行く。

「よかったわね、海にあがれて」

「陸酔いごときでそこまでいじめるの、あんたは。」

「やぁね、いじめるだなんて」

人聞きの悪い、と言いながら悪魔の子は人の悪い笑み。
手すりにもたれて海を眺めていたナミは体を離し、ロビンに向き直る。
しっかりとした足取り、波に叩かれる船がどんなに揺れても、絶対に揺るがない。

「残念だと思っただけよ。また手を差し伸べるチャンスは、次の上陸までお預けだもの」

「とか言いながら、いざふらついたらまたフェイントで手を引っ込めるんでしょ?」

「あなたこそ、いじわるね」

悪戯っ子は2人してにやにや笑う。
そこへフランキーがやってきて、眉をひそめて不審顔。

「なんだおまえら、悪巧みか?」

「んべ、あんたはお呼びじゃないのよ」

舌をつきだすナミに、フランキーはけっと吐き捨てる。
ロビンはナミの頭に手をやって、体裁程度にたしなめた。

「ダメでしょう。目上の人にそんなことしちゃ」

「オウオウ、言ってやれ言ってやれ。」

「お言葉ですけど、海賊にそんな礼儀が適用されると思ってるの?」

澄まして言い放つナミに、年長組2人は顔を見合わせて肩を竦める。
海賊と出されてしまえば引き下がるのはこっちの方だ。

「口の達者な妹だな」

「手を焼くわ」

「それじゃあお年寄り2人で、ゆっくり談笑なさってくださいな」

けたけた笑いながら、楽しげにわめくルフィたちの方へ歩いていく。

「……口の達者な妹だな」

「……手を焼くわ」

エスプリ返す強かな年下の女の子に、いい大人2人揃って情けなく笑った。
そこでナミは立ち止まり、一度だけ振り返る。
肩越しにこちらを見た目は、笑顔の影に途方に暮れたような色が差していた。
どうしたのという言葉を遮って、ナミは囁くように、でも確かな発音で言った。

「私たぶん、変わっていくものしか愛せない」

そしてまた背中を向ける。
その視線の先で、ウソップの新作星が爆発した。
笑い転げるルフィとチョッパーの間に入り込んで、なにやってんのよと大笑い。

「アウ、なんの話だ?」

「あの子は陸(おか)に永遠を見るの」

「だからそりゃ、なんの話だよ」

「永遠は退屈すぎるのでしょう。あの子は冒険家だから。」

「……なるほどね。
 ルフィとあいつは、グランドラインを出てやっていけんのかね。
 陸どころか、もう普通の海でも満足できねぇだろ」

実は、本当に意外なる事実としては、こと海に関してのナミの無茶っぷりはルフィのそれと比べてなんら遜色ない。
グランドラインの悪魔じみた海が立ちはだかるたび、危険な笑顔を浮かべて2人は笑う。
おもちゃを見つけた子供のそれ。
振り回して壊してしまわないかと、大人はいつもはらはらしてしまう。

「何周でも付き合うけどね、私は。」

「そのあとはどうすんのよ」

「そのあとなんて知らないわ。永遠じゃなければ、いつか何かが終わるでしょう。」

「死ぬまでグランドラインをさまようのか。呪いって言うんだよ、そういうのは。」

「呪いでもいい。誓いでもいい。祈りのようなものでもいい。」

ロビンが目を伏せる。
その視線の流れを辿りながら、フランキーは初めて会った相手のようにロビンを見た。
いつの間にこんな風に、笑うようになったんだろう。

「ただ、変わっていくものしか愛せないなら、私も変わるだけよ」

ロビンの声を掻き消すように、一際強く笑い声が響く。
あちらできらり、こちらできらり。飛び交いながら笑顔に光が反射する。

「上等じゃないの、恋愛はそれくらい献身的で自分勝手でなくちゃいけねぇ」




どいつもこいつも自由気まま、誰がなんと言おうと、行きたい場所に行く。

辿りつく先で、愛するひとさえ笑っていれば。



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余談ですが、我が家ではさり気ないフラロビを推奨する所存です。
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