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□The DAWN
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 夜も明ける前、ひっそりと海賊船は入り江に入る。

「夜明けまであと30分ってところね。
 取りあえず仮眠して、陽が高くなってきたら順番に船を降りましょう」

ナミの言葉を受けて、それまで忙しくしていた仲間たちがあくび交じりに了解した。
ルフィですら、眠気に負けて大人しく引っ込んでいく。
ぱっと見の冒険色が薄かったのもあったけれど、さすがに夜を徹しての操舵に疲れてもいた。

口々におやすみと言いながら、朝もやの中姿を消していく。
そのちぐはぐな状況に少し笑って、ロビンはひとり船を降りた。



 船は居心地がいい。
優秀でいててらいの無い仲間たち、世界の果てまで自分を助けに来ると実証してもくれた。
昔の自分とは何もかもが違うのだ。守ってくれるひとがいること以上に、守りたいひとがいることが嬉しい。
それでも時々、古い悪夢の時代を懐かしく思うこともある。
夜明け前の街並み。
しんと静まり返った石畳の道を、足音ひとつ立てずに歩いていく。
昔の自分をなぞって、何もかも変わったのだと確認していく作業。
帰りたい場所がある。
「あら」
当てもなく歩いているうちにナミの言った時間が過ぎたようで、白い薄日が東の空から差し込んできた。
なんとはなしに光の当たる壁に視線を寄せれば、目に入った光景に思わず笑う。
レンガ塀に横一直線、貼り並べられた7枚の手配書――かわいそうに、チョッパーは懸賞額のせいか貼り出されていなかった。
こんな場所にひとりでいても、見慣れた顔が見返してくれる。
「そろそろ帰らないとね」
気を張り詰めて誰より疲れただろう航海士は、部屋に戻ってすぐ眠りについただろうけれど、目が覚めたとき隣に自分が居なければ不安に思うに違いない。
自惚れじゃない、自信。そんな感情を持っていいのだと思えるくらい、分かり易い愛情をたくさんくれた。
夜明けのあとに大騒ぎで上陸してくるだろう彼らが目を引かないよう、せめてこれだけは剥がしておこうかと手配書に手を伸ばし、ためらった。
荒々しい海賊たちの中、たったふたり、場違いな笑顔を浮かべていて。
「楽しそう」
水平線から溢れてきた朝陽のように、微笑みが止まらない。
太陽が似合うあの2人が、闇そのもののようだった自分に手を伸ばしてくれたこと。
大好きだと、全身で言ってくれたこと、20年分の哀しみを補ってもまだ余りある喜びをくれたこと。
幸せが心臓の裏側からじわじわと染みて、やわらかい熱を放っている。
夜が、明けたのだ。





※※※※※※※※※
20年間待ちわびた夜明け。

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