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□きっと濃いマリンブルー
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「これ、グランドラインじゃないわね」

「うん、東の。8年かけて描いたやつをルフィが全部めちゃくちゃにしちゃったから、描き直してるとこ。」

実際にそうだとしたらとんでもない大罪だろうに、ナミはふっと頬を和ませる。
そこに自分の知らない2人の歴史を見た気がして、ロビンは少し複雑だった。

「あれはあれでよかったんだけど、海図はちょっと勿体無かったなぁと思って」

「まさかこれ、記憶だけで描いてるの?」

「うん。もともと、行ったことのない海を資料だけで書き起こしたものだし、この海はどんな色してたんだろうとか、想像しながら描いてたからかなりはっきり記憶に残ってるわ」

ナミが、どんな状況と理由で8年間、最終的には何枚の海図を描いたのか知らないけれど、その中の一枚を抜き取ってここまで鮮やかに蘇らせることができるなんて。

「やっぱりあなたは天才ね」

「世界でほとんど唯一の頭脳を持ってるひとにそう言ってもらえるなんて光栄だわ。あんたこそ、天才よ」

「ポーネグリフは、私が教えればあなただって読めるようになるわ。でもあなたのその知識を教えてもらっても、私はあなたのようにはできない」

「簡単に言わないでよ。あんたの膨大な知識を引き継ぐってことが、そもそもどれだけのことか分かってんの」

「でも、」

「いいの。私は天才、あんたも天才。あんたにできないことが私にできて、私にできないことがあんたにできる。私たちには世界中の誰にもできないことができて、そして私たちの未来はきらきら宝石のように輝いている。それでいいじゃない。」

「ナミ、それ、素敵な話ね」

「なに他人事みたいに言ってんの」

「ごめんなさい、なんだか嬉しくて」

真正面から覗き込んだら自分には不釣合いに映る気がして、つい遠くの眩しいものを見るように目を細めてしまう。

きらきら宝石のような未来。ふたり並んで、世界中の誰にもできないことをやってのける遠い海。

どんな色を、してるだろう。

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