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□溶けあう手のひら
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 ナミちゃんくらいの年頃の女の子なら、そう、例えばあのお姫さまとかと2人でなら、傍目にもきっと微笑ましいと思う。

「でも、私とじゃちょっと…意味深じゃない?」

「考えすぎなんだよ、ニコ・ロビン。有体に言やぁ自意識過剰だ。」

「そうなのかしら。……そういうもの?」

「でなきゃよっぽど思い入れがあるかだな。」

「そうね、思い入れならあるけど。でも、やっぱり不自然だわ。あまり見かけないもの。」

「そうか?そもそも手配書があちこち貼られてようと気にせずうろつき回ってるじゃねぇか、おまえら。
 今更人目なんか気にしてんじゃねぇよ。でなきゃすっぱりやめちまえ」

「でも、ナミちゃんがしたがるのよ。……私も嫌じゃないし」

「っかー!もう面倒くせぇな、のろけに付き合わされる方の身にもなりやがれ!」

「のろけ?のろけになるの?相談のつもりなんだけど」

「だからよけぇに面倒くせぇのよ、ったくてめぇらはどこまでもタチの悪ぃ……」

「てめぇら?」

「っと、いけねぇ。こっから先は内緒だ、内緒。かわいい妹分の信頼を裏切りたくねぇからな」

妹分、その一言で自分以外のもうひとりは百パーセント明らかになったわけだけれど。
いったい彼女にどんな内容の話を持ちかけられ、なんて答えたのだろう。

「まあそれはさておきだ。大丈夫、せいぜい仲の良い姉妹くらいにしか見えねぇよ。――手ぇ繋いで歩いてるくらい」

「腕を組んでてても?」

「お姉ちゃん大好きなんだなぁって感じだ。それこそ微笑ましいじゃねぇか。」

「そう……、それはそれで残念ね」

「恋仲に見えるようにして見せつけてぇなら、相談は振り出しに戻るな。いっそ往来でキスでもなんでもしちまえ」

今度こそ本当に面倒くさいと言ったふうに諸手をあげて、フランキーは席を立った。
そうは言ってもここまで付き合ってくれるのだからやっぱり人がいい。

「ありがとう、フランキー」

「おう。――ひとつだけ忠告するとな、手を握られたらしっかり握り返す、これはお約束だ。人の目なんか気にしてどうしようかなんて迷ってるから、不安にさせんだよ」

ただの一般論だぜ?と悪戯に笑って遠ざかっていく大きな背中。やっぱり人がいい。
この分ならナミちゃんに、ちゃんと私の気持ちを察してフォローまでしてくれただろう。

しょうがないわ。
人と接することすら不慣れな、山奥の珍獣みたいなものだもの、私。

おかしくなってくすくす笑ってると、不審顔でナミちゃんが寄ってきた。

「なにひとりで笑ってんの、気持ち悪いよ」

「あら、ごめんなさい。準備はできたの?」

「うん、おっけ。行こ。」

ちょっとそっぽを向いて歩き出す。
船を降りてすぐ、遠くから街の騒ぎが聞こえてきた。

「ルフィたちが問題起こしたわけじゃないわよね?少しくらいはのんびりしたいんだけど」

「大丈夫。大きな街みたいだから、これで普通よ。」

「へぇ、楽しみ」

前をみつめたまま、さ迷うように揺れた手がそっと左手に触れる。
ためらいながら、歩くリズムに合わせてまた遠ざかりそうなそれをぎゅっと握り締めれば、驚いたように振り仰ぐナミちゃんの顔。

「私も楽しみだわ。早く行きましょう」

どちらともなく熱を放つ手のひらを重ね合わせて、同じだけの力で押し付けあって。
ふたりひとつになって、ゆっくり街の中に溶け込んでいく。

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