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□7:ろくでもない愛し方
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 「海楼石が欲しい」

前触れなく呟いた私の言葉に、ロビンが手を止め振り返る。

「どうしたの、急に」

「だって、ロビンのハナの手、迷惑、怖い、無敵すぎるよ」

不機嫌な顔で言い募れば笑い出して、またシャツのボタンをしめ始める。
冗談を相手にしてるみたいな態度に腹が立って、枕を投げてやった。
ベッドのふちに腰掛けたロビンは背中に生やした手でなんなくそれを払いのける。

「ほらそういうの。こういう時は甘んじて受けるもんよ」

「それは能力じゃなくて性格の問題ね」

なんて、また笑って、すっかりいつものスタイルに戻ったロビンの背中。
ふてくされた私はまだなにひとつ纏わないまま布団にくるまっている。

「誕生日に買ってあげましょうか?海楼石でできた指輪」

「ほんと?」

頭のよこに片手をついて、振り返るロビンが明かりを遮った。
逆光で微かにしか分からない表情。窺うでもなく私は単純に喜んだ。

「その代わり、あなたには首輪と手錠をかけてもいい?」

「……は?」

眉をひそめた瞬間耳にじかに落ちてくる、怒気にも似た迫力の怖い笑い声。
耳を噛んで、そのままで囁く。

「鎖に繋いで、鍵を海に捨ててもいい?」

「は、ちょっ、」

「秘密の薬を飲ませて、私の名前以外呼べないようにしてもいい?」

余韻の残っている敏感な肌を掠めるように撫で上げて。

「……ま、まって、」

「そうしてくれたら、私も海楼石の指輪をはめるわ。」

首輪も手錠も鎖も薬も、本当は必要ないということを教え込むように、ゆっくり、指が這う。
違う、教え込まれているんじゃない、自覚、しているんだ。

「ごめんなさい、」

高まる体に反してぼーっとした頭に、ロビンの声が熱を持って響く。
その瞬間、自分の状況を思い出す。

「そんなナミちゃんを想像したら、また欲情しちゃった」

抵抗しなきゃ、と思ったのは束の間。
まだとろとろにほぐれているそこにロビンが触れて、背筋がぞくりと粟立てば、もうつま先までロビンの言いなり。

乞われるまま膝を開き、せめられるまま喘ぎ、少しのスリルを求められれば噛み付いて。

「何もかも私にくれるなら、私を全部あげる」

「…………っ」

声にならず反らせた喉に、ロビンの指が絡まる。

「でもそういうの、まだあなたには重いでしょう?」

こんなことをしながらも、子供にするみたいなキス。声。
息もままならない私をなだめるように、頭を撫でる手。

「だから、ごっこ、でいいわ。今は。」

全身に絡みつく指と言う指。
腕を縛り、喉に手をかけ、返事もできないくらいせめたてる。
二本の本当の腕だけが、やさしく頭を撫でて、涙を拭ってくれた。



海楼石なんていらない。
冷たい鉄に繋がれるくらいなら、冷たい指先に繋がれるほうがいい。

そんなことを、ただ夢中で考えていた。



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