れんさい

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「やっぱり遅かったのか」
マサキは爪を噛んだ。
「おまんの所為じゃ!」
龍馬はやりきれない思いをぶつけた。
「窮鬼の所為じゃないよ」
悪夢の神の様子を見に来た三女の神が言う。
「俺はどうすればよかったんだよ」
三女の神はマサキの方を抱いて、龍馬を睨み付けた。
その後ろに怒りを露にした次女の神。
「おい!龍馬!てめぇは窮鬼の気持ち考えらんねぇのかよ!」
突然の登場に腰を抜かした龍馬は意味の無いものを言った。
「考えてなかったんだな?ん?」
覚悟!
殴り掛かった次女の神を「水鳥ちゃん!」の一言で止めたる声が響いた。
「やり過ぎ禁止」
普段はゆったり構えた長女の神が珍しく声を張った。

「助かったぜよ」
龍馬が座り直すと、三女の神がすかさず押した。
「止めなくてもよかったと思います。」
「葵ちゃん、こんな時だからよくないの」
諭すような物言いに葵は俯いた。
「ありがとう葵ちゃん。」
マサキは葵の手を取ってぎゅっと握った。

「さ、悪夢の神の様子を見に行こう」
マサキに部屋まで使違えられ、開く襖の奥に向かった。


「ずっと寝てる」
「揺すぶっても起きねぇんだろ?しょーもない奴だな」
「水鳥さん」
寝息を立てている悪夢の神は不自然に自然すぎた。
「もとからこうやって寝ていた気がします」
「今まで普通に話していたのにな」
マサキは身震いと共に涙が出た。


虫の音しか聞こえない静かな夜。
床でひそひそと会議をする者が増えた。
「消えたな」
皆口々に消えた神の名を出し、次はどうする。あいつは意外と人の為に働いていたなど本来の会議はままならない。
それでも今年の幸せの分け方は、不幸の分け方は、と真面目に積み上げていく神も少なくはなかった
「わしはあいつらの柱んとこに、もういっちょ行って来るぜよ」
あいつらと言うのは去年神墜ちした太一、鋼一、大地、篤志のことだった。


珍しいパターンで、四つの神が同時に太い柱を作った。
周りに居た神を呑み込んで被害は拡大。
道祖神のような数の多い神などは、この時どれだけ消えたのか定かでは無かった。

「今年も墜ちたぜよ」
今は何事も無かったかのように神が集っているのを異様な光景のように龍馬は思った。
ガヤガヤと言う声の中、突如何かに呼ばれたかのように振り返る。
そんな龍馬は辺りに見えるはずの光景を一つも見つけられず、手を伸ばした。
言い争いの絶えない腐れ縁の水鳥が自分の伸ばした手を取り、飛び込んでくるそんな夢物語を見ながら。

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