れんさい

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「京介!京介!」
揺すられる感覚にはっと目を開けた京介は次の瞬間、怯えたような顔をした。
「寝すぎはよくないよ」
起き上がった京介を笑顔の天馬がギュッと抱きしめ、安心させる
「大丈夫だよ」
「天馬、」
無事だったのか。
安堵したかったが、誰か親しい仲の神が消えた気がしていた。

「天馬、幸の神はどぉ?」
襖がずーっと開き、選択の神が入ってきた。
「ほら!大丈夫!」
天馬がありがとうと言うのを聞いて、京介はなぜ見慣れぬここに寝かされていたのか思い出した。

「すまない。」
「嫌だなぁ」
へらへら笑って
「でもほんと、君柱になっていたらと思うと怖いよ」
ほんの少し甘い香りのするお茶をもらった瞬間
「くれてやる必要もない」
低く強い口調の野草の神が入ってきた
「白竜、落ち着きなよ」
選択の神が止めるのも聞かず、京介の襟を掴んだ
零れたお茶が布団に染みを作る。
「大迷惑だ!お前みたいなひ弱な神はさっさと消えてしまえばいい!」

投げ捨てられるように布団に打ち付け部屋から出る白竜を見送ると、咳き込みながら笑いだした


「確かに迷惑だった」
「白竜はあれで、意外と心配してるんだ」
京介は苦笑して、わかってるよね?と問う選択の神に返す
「何年の腐れ縁だと思ってるんだ?」


俺は迷惑がられて無いからね
白竜に野草を教わりに行くと言って天馬が出ていった後すぐ、京介は選択の神にとんでもない事を頼んだ。
「わかった。できるだけやるよ。」
「見返りは」
「ボクの過ちの連鎖を断つことだ」
運命を
「頼んだ。シュウ」

消えてしまう運命が変えられないなら、消えた後の運命を変えたい。
京介の願いだった。
「本来なら人の思いが叶うための手助けをするのが神だが」
「それなのに、おもしろいね」
シュウは本当に心から笑っていた。


「悪夢の神が迷宮に入った」
マサキがうつむいた
「防ぐことはできなかったのか!?」
典人が声を荒げ、マサキを責めた。
誰のせいでもないこと。
だからやりきれなかった。
「どんなに激しく揺すぶっても、嫌がりもしない」
神々が迷宮と呼ぶのは覚めない眠りだった。
それは社を失うことや、神と言えども心があるために何か強いショックを受け、思い出の中から帰って来れない事をさしていた。

通常の神の睡眠と見た目上はなんら変わりはなかったが、呼吸をするようになる。
普通の神は呼吸などという面倒なことはしない。
怠惰だと言われてもおかしくはないかもしれない。
それをするのは、しなければ生きていけない生き物だった。

「原因はなんだったんでしょうか…」
鶴正がおずおず皆が気にしている事を聞いた。
「わからない。少なくとも、しゅうれんの神達が消えたショックではなさそうだけどね」
「それいじょーわからないんじゃなー」
「蘭丸くんは屋敷神でしたから、もしかしたら撤去されちゃったのかもしれないですよ…」
最もな意見だった。
ずっと忘れられていたならば社を壊されても祟り神になるような力などもたない。
居場所を無くしたらこうして迷宮に入り消えるのを待つか、急に消えるだけなのだ。

「おい、拓人にはこのこと伝えたか!?」
今しなければならないことは拓人を消えも、迷宮入りもさせないよう手を打つことだった。

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