イナGO

□朝食ちゅう
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ジリジリジリジリ

目覚まし時計を力一杯叩いて布団に潜りなおす
潜りなおして携帯が震える音に飛び起きた
「朝からなんだよ!?」
悪態をつきながら携帯を開いてメールボックスをあける
「霧野先輩か」
そう言えば今日も朝練あるんだよな
行きたくないな
体調不良だったってことにして今日は遅刻しようかな
なんて、思いながら本文を見た
『朝練遅れるなよ』
簡単な一行だけの文
俺はそれだけの簡単な文1つでつい動いてしまう
布団から出てすぐにジャージを着て部屋を出る
いつもしっかり食べる朝食も取らずに学校に向かうのはなんだか変な感じがした
だけど先輩にあえるのが楽しみで

いつも遅刻するのに今日は早いな。三国先輩に誉められた
本当なら霧野先輩に誉められるはずだったのに、あんなメールを送ってきた当の本人が来ていなかった
いや、メールを送って来たからって一番に来るものではないのはわかってはいたけど…
少しだけ期待していた

「どうせまたキャプテンと一緒に登校するんだろ」
そう思うとイライラした
更衣室でジャージを脱いだままロッカーに投げ入れる
その勢いのまま力一杯閉めて、ため息を吐いた
まだまだキャプテンの存在がデカいんだな
いつか絶対に勝ってやる!そう思った瞬間
不意に
「狩屋、」
っと肩を叩かれて驚いた
でも、声で霧野先輩だとわかって胸が高鳴った
「おはよう狩屋、今日は早いんだね」
そう言って飾り気のないタッパーを押しつけてくる
自分で参加を促しておきながら
それはそうとこれ
「何ですか?」
「ちょーしょく」
へっ?
「お前のだよ」
マジかよ
さっきまで、どうせキャプテンと来るとか思ってイライラしていた自分を笑った。

そっと中身をみて霧野先輩らしいやっと思った
サンドイッチが入るだけ入れられていて、端にコンニャク畑が押し込んである
「先輩は俺の親ですか?」
「そのつもり。強いていうなら保護者?」
彼女だとか、可愛いこと言えないんですか?
まだ付き合い初めてすぐだけどさ
センスの無さはどっちもどっちって言うのがわかった
「俺が朝食とってないって、なんでわかったんですか?」
「勘がさえてたから。いいから食べろよ」
押しつけられたタマゴサンドを受け取って頬張った
「うまい!!」
って言ったら笑われた
「そういえば、キャプテンと一緒に登校しなかったんですか?」
ちょっと嬉しい
「常に一緒に行動するわけじゃない。神堂なら先に登校してる」
「それなら俺と常に一緒に行動しません?」
どうせ弁当つくるから遅くなってキャプテンと登校できなかっただけだろう?だけど嬉しい
「いいよ。行きも帰りも一緒。教室移動は無理だけど」
って今度は恥ずかしそうに言う
「キャプテンとはいいんですか?」
聞くなんてバカだ
答えなんて知ってる
「親友なだけ。おまえが妬くことなんてなにもない」
ほら当たり前のように安心をくれる
「信じてます」
ただ、ぼそっと一言
一緒にいた今までの時間が羨ましいです
「何か言ったか?」
急に心配そうな顔をする
コロコロかわる表情がふと俺をつき動かした
もっといろんな表情が見たくて食べさせてくださいって言ってみると
案外素直にジャムのを食べさせてくれた
「うまい?」
甘い桃の味が口の中を満たす。
うまいけど物足りない
飲み込んだのを確認すると
歯を見せて笑いながらまた聞いてきた
「うまい?」
その口にキスをする
最初は誰か来るからと逃げ腰だったけど
「先輩と同じくらい甘くてうまいですよ」
っと言うと
先輩から深くなっていった
息継ぎに離れた瞬間にすかさず先輩の喜びそうなことを言ってやる
「先輩の方より美味しいもんないですよ」
先輩はきらきら輝く綺麗な目で俺に、もっとと煽った
ほんと食べられるの好きだよな
俺はそれ以上のことをしようと思って先輩を押し倒す
その瞬間
ガチャ
部室のドアが開いた

俺たちは慌て立ち上がる
「霧野と狩屋じゃん」
入って来たのは浜野先輩と速水先輩、倉間先輩だった
なになに?
うまそうじゃん
浜野先輩ののばされた手を見事にかわす
「俺のちょーしょくなんで」
わるいわるい、ついうまそうだったからさ
笑いながら遅れるなよって先輩達を引きつれて出ていった

「無遠慮」
霧野先輩が吹き出すのをこらえながら促してくれた
促さられるまま食べ始めるとまた笑顔になる
おもしろいぐらい表情がコロコロ変わる先輩が可愛くて、放課後のお楽しみを作っておこうと思った
とりあえず先輩をキープすることを目論む
「今日の後片付け、一緒にやりましょう」
今日は神堂と…
言い掛けた言葉を飲み込んで、了解っ。ただ一言だけ言ってロッカールームからでていった
まだまだキャプテンに依存する霧野先輩。いつか俺に依存させますから

朝食のサンドイッチを味わいながら、キスの味を思い出して緩む口元に自分で苦笑した
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