write song 2

□英雄フォレスト
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夏風が吹き抜ける
空を見上げてみる
何処からか
飛んできた鳥の群

飲みかけの
カップ置き
『何処から来たんだい』
と笑う

マスクを
したまんまの
午後三時半



世界は案外
残酷で
複雑に
渦巻いた

私なんて
誰も
助けられない
ままで


村外れ、
崖の上、
人目につかない
この家に

訪れる人など
居ない訳で。



声を上げないで!
崩れた決意、
耳塞いで
諦めて

目に映った
残骸(モノ)に
後悔する日々は


物語の
中にしかいない
英雄に
少し憧れる

ことくらい
許してくれないか?



淡々と
闇に堕ちる
壊れてしまった
気持ちでも

それが
人生だから。
歪んだ視界。


ねぇねぇ、
理想の世界を
想像して
零れる涙は

今日も明日も
乾いてくれないものか?



なんて
現実逃避して
外を眺めていると

突然に
聴こえてきたのは
叫び声


飲みかけの
コーヒーを
机中に撒き散らし

『どうしよう……』
と窓の外を
見つめていた。



『人を助けると
灰になってしまう』
それはすでに
知っていたこと

私の力は
強すぎる様で


物語の
中なんかじゃいつも
求められる役
の筈が。

これは違うと
知っている訳で。



トントン、
と響きだした
ノックの音に
気がつく

緊張なんてものじゃ
拭えないくらいで。


ねぇねぇ、
理想の未来は
想像しているよりも

まさに簡単で
ドアを開けて
しまうものだった。



しゃがみ込み
うずくまる姿に
その人は驚いて

『関わると
灰になってしまう』
と言うと
ただ笑った


『僕だって
灰になってしまうと
離れて暮らしてた

でもこの村は、
案外怯えなくて
良いんですよ?』



タンタン、
と鳴り響いた
心の奥に
閉まっていた

気持ちと
この村が
動き始めてて


ねぇねぇ、
理想の奇跡を
教えてくれた
君の声


『また迷った時は
村で待ってますから。』



夏風が今日もまた
赤いマスクの紐を
フワリと少しだけ
揺らしてみせた。

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