短編小説

□風とムチ
1ページ/3ページ




「うわっ、今日は風が強いな…」
「春にしては、だろ?」
「何だよそれ意味わかんねぇよ」


部活の帰り、風丸に誘われて一緒に帰ることになった。

基本俺はマックスと一緒に帰るが、今日は後輩たちを引っ張ってどこかに行ってしまった。
俺一人になったところを風丸が誘ったというわけだ



「風にあたってる半田って画になるな」

「…はい?」


俺は風丸の言ってる事が理解出来なかった。


「だって、風に吹かれて少し寂しげな表情してる奴って男女関係なく画になるだろ?」
「どんだけドラマ見てんだよ」

「俺ドラマなんて見ないぞ?」

「嘘ばっかり…うわっ!」


また強い風が吹いた。
ジャージの前を開けていたため、袖を通してなかったら飛ばされるところだった。

俺はちょっと不安になってきたので前のチャックを閉じた


そんな俺を見て風丸はクスクスと笑っていた



「な、なんだよ…?」
「いや、なんでもない」
「何でもなくないだろ、言えよ!」


「いいのか、言っても?」
「当たり前!!」


「さっきの半田、可愛かったぞ」

…………コイツ何言ってるんだ?
風丸が真顔でさらに言葉を繋げた


「慌ててチャックを閉めるところを見ると、犯したくなる」
「は、え!?冗談は寄せよ!!風丸にしてはずいぶ…」

「じゃあ、俺の家に行こうか。そこでゆっくりと……」

ニコニコと笑いながら俺の手を握ってくる風丸は少し怖かった。

何よりも怖いのは、『ゆっくりと』の後に何も言わなくなった事だ



「あ、で、でも今日風強いしそれに悪いじゃん!」
「大丈夫、家近くだし親今日居ないし」
「そういう問題じゃなくてだな…」

「じゃあ行くか!!」



こんな風が強いのに風丸は疾風ダッシュを使って家まで走っていった


むろん俺は強制的に連れて行かれてる

強風+疾風ダッシュのせいで俺は目を開けていられなかった







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ