短編小説２
□まだ恋心とはいえない
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そいつは来た
「ふふっ、いい格好ね」
ニコニコと…まるで人を見下すような態度で
「まさにお払い箱、と言うに相応しい人ですわね」
そいつは…近づいてくる
笑いながら…見下しながら
「アルファ」
「……」
「あなた、あの松風天馬って子のイントラスト修正から成果を上げられてなかったものね。」
「……」
「いえ、むしろ下がったって言った方がよかったですか？」
「……」
「あらあらだんまり？私なんかにプロトコルオメガを奪われてしまって悔しいから？
それとも議長に見捨てられてしまったから？
今手足拘束されてるから？」
「……」
「何も喋りませんね、ちょっとくらい喋ってくれませんか？」
彼女は腰を下ろし、頬を撫でてきた。
ゆっくりじわじわと…
「安心して、プロトコルオメガは私…ベータが仕切って議長に認められるチームにしてあげますから」
「……」
「あなたはここでゆっくり眠ってるといいですよ」
彼女…ベータは、撫でてた手を止めて、今度は頬を舐めてきた
「……！」
「あ、反応した。アルファにも可愛いところあるのね」
「……」
「私、議長に呼ばれてるから出るわね。」
「何故、お前はここに来た。」
「……」
私が言葉を発すると、ベータは足を止めた。
そして一度こちらを見た後、口を開いた
「貴方に惚れたから、ですね」
そう言い残すと、ベータは牢獄を出た。
「惚れた…。理解しかねる」
なのに、胸が熱くなる
彼女はまた来るのか…
心のどこかで来てほしいって思ってるのかもしれない。
次彼女に会えるのは―――
END