短編小説2

□生まれ変わっても…
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「あれから一年か…」

俺、天澄白竜の恋人のシュウは去年のひな祭りに亡くなった。



『ひな人形、見てみたいな』

男のくせにそんなことを言ってたシュウはかわいかった。
あの笑顔はいまでも忘れられない。

俺たちはひな人形を見に、専門店まで行こうとした。
しかしそこで強盗が起き、シュウが人質にとられてしまう。


一千万分のひな人形を用意しなければシュウは殺される、周りのだれか一人でも逆らっても同じ。

だから俺は手も足もでなかった。


結局、一千万円分のひな人形は用意できず、シュウは殺されてしまった。



『白竜…助けて……』



あんなに苦しんで助けを求めていたシュウを俺は守れなかった…助けてやれなかった…


俺は今でも後悔している、あの時俺がしっかりしていればシュウは死ななかった。
あの時死ぬのは俺の方だったはず…




「シュウ…今年もひな祭りがやってきた。今年は用意できた、ひな人形を…」


そう、シュウが見たがっていたひな人形を俺はようやく手に入れられたのだ。


あれからバイトをして…いっぱい稼いで…自分の生活費すらも削って


ただ一人の恋人のために買った、大切なもの



でも


「一人で見てもつまらないな…まして男が買うものじゃない。」


お前がいなきゃつまらない、シュウ。
お前と一緒に今日を過ごしたかった……

もう一度俺に笑いかけてほしい、ひな人形を見たときのお前の笑顔が見たい
俺のそばでずっと笑っててほしい…



そうおもっていたとき



『かわいいね』
「…!」
『一番上にあるのがお内裏様とお雛様だね、三人官女、五人囃子、一人欠けちゃってるけどまるでチームゼロだね。』

「シュウ!!」



気が付くと俺は立っていた。

俺の隣にシュウがいる、幻を見ているかのように


いや違う。シュウは死んだ、今ここにいるシュウは幻


『白竜、ありがとう。僕のためにこんな素敵なひな人形を用意してくれて。』
「シュウ…」

『白竜、あの時のことは気にしないで。白竜に何もなくてよかったと思ってるんだよ。』

「でも……俺はお前を…見殺しにした……」

『それは違う。白竜はちゃんと僕を助けようと一生懸命動いてたじゃない。』
「えっ…」
『僕はちゃんと知ってるんだ、お金を注いで高いひな人形を作るための資金にしたりね。」

「シュウ…」

『それだけで十分だよ白竜、ありがとう。最後にこんな素敵なひな祭りを過ごせたしね。』

「最後…最後ってなんだよ!」

『僕には未練があった、成仏できないほどに。でもそれが今日晴らされた、もう思い残すことはないよ。』


「シュウ!!!」



俺は光っているシュウの体を抱きしめようとした。

だが幻、立体があるはずがない。
俺の体はシュウの体をすり抜けた



『白竜、もしも生まれ変わっても僕たち、恋人がいいね。』

「……」

『今度はひな祭り、一緒に過ごそうよ。』


満面の…そして優しさのこもった笑みを浮かべると、シュウの体は眩しすぎるほど光り、そして消えた。


本当に幻を見ていたかのようだった。

けどもしもあれが幻だったにしても俺は…




「当たり前だろ、シュウ。次は一緒に…ひな祭りを過ごそうな。」






生まれ変わっても俺たちは俺たちのままで


今度は誰にも邪魔されず、二人きりで過ごそうな。



シュウ−−−−俺の一番大切な・・・・







end
 

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