□恋愛小説
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もしかしたら、あの出来事は私を明るい未来へ導かせるためにおこったのかもしれない。
あのときは、、、
辛くて…悲しくて…
もう人生どうでもいいなんて思ったけれど。
こんなにも幸せな未来が待っていたなんて…
夢にも思わなかったんだ。
*4月*
「お母さん、行ってくるね。」
その言葉と同時に香ばしい匂いのするキッチンから私のほうへ向かってくる足音が聞こえた。
「もう行くの?いってらっしゃい。お母さんもあとで行くからね。」
目じりにしわをよせて笑っているお母さんの顔をみていると、なんだか泣きそうになってくる。
あの悲しい出来事があって、一番近くで支えてくれた唯一大切な人。
お母さんがこの人で、本当によかったよ。
心の中でつぶやいた。
私は座って靴ひもを結び、心の中で「よし!」とつぶやき、ドアへ向かった。
ガチャっ。
わぁぁ、きれい!
朝を出迎えてくれたのは、満開の桜だった。
玄関の前で、桜に見とれてるわたしを覚ますかのように、頬にひとひらの桜が舞い降りた。
私の家の前は、桜並木になっていて春になると満開の桜が私を迎えてくれる。
暗く染まっていた私の心を癒してくれたのも、この桜だった。
駅に行くまで、この桜並木を歩いている時間が心地いい。
ほんのり桜の香りがはなへ漂ってくる。
夢中になって歩いていると駅がみえてきた。
駅での登校は今日が初めて。
なぜなら今日から高校デビューなのだ。
*過去*
中3、1学期。
「美香、一緒に行こう!」
私の目の前にいるのは、幼馴染の芽衣。
「うん。楽しみだね、芽衣と同じクラスで本当にうれしい!」
私と芽衣は家が隣同士。小学生の時から毎朝二人で学校にかよっていた。
芽衣は、かわいいというよりも美人で、背が高くて、なによりもひと思い。
そんな芽衣は胸を張って自慢できる大親友だ。
芽衣といると学校まで40分もかかる道のりでも、一瞬のように感じる。
一緒にいて、いっときも笑いがとまらない。
芽衣が言った。
「もう、今年から受験生だねー…でも!志望校は!!!!!」
『『西高!!!』』
私と芽衣は同じ高校を目指している。
芽衣と別々の学校なんて信じられないしっ!
西高は芽衣のお姉さんが通っている高校だ。
芽衣と芽衣のお姉さんはとっても仲良し。だから、二人で一緒にいるときは、『いいなぁ』と思ってしまうほどだ。
芽衣の決まり文句は『お姉ちゃん以上のお姉ちゃんはいないよっ!』だった。
こうして、中学生ラストの1年が幕を開けた。
中学2年生の時は正直言うと、少し荒れていた。
スカート丈はひざ上10センチだったし、長い髪もしばらなくちゃいけなかったけれど、おろしていた。
当時の私は、芽衣と同じなら怖いものなし!と思っていたから、いつも怒られる時は芽衣と一緒だった。
そんな私たちは男子からも少しもてた。
年間で告白された回数を競うほどだった。
結果は私は6回、芽衣は8回でやっぱり芽衣のほうが多かった。
けれど、私には芽衣の秘密をしっている。
それは、小学生のときから芽衣はいつもクラスで話している『隼人』のことが好きなのだ。
隼人は顔は並より上くらいの顔でそこそこもてていた。
隼人はいつも私達二人に話しかけてくる。
私の予想では隼人は芽衣の事、好きなのではないかと思う。
そして、中3になった今でも隼人一筋なのだ。
芽衣は見かけによらず、人よりも純粋だ。
今までは何回も告白されていて、一度もOKしたことがない芽衣にくらべて、私は好きでもないのにOKしまくっているのだ。
だから私は今までの彼氏は5人いた。
でも、少しも長続きしたことがない。せいぜい2カ月ほどだった。
そんな私をねたみ、女子からちょっとしたいじめを受けていたのも事実だ。けれど、芽衣は「そんなの気にしなくていい」と励ましてくれて、少しも落ち込んだことはなかった。
正直、芽衣以外の友達はいらないとおもっていた。
けれども、私に近づく女子は、少なくはなかった。
一応、愛想笑いはしているけれど、一度も心の底から楽しいなんて思ったことは想定ない。
家でも、「芽衣以外の友達なんていらない!」なんて言っていると、お母さんも少し心配そうに、「友達はいっぱいいたほうが得よ?」なんて苦笑いしながら言っていたのを
よく覚えている。
たしかに、友達がたくさんいれば、誕生日の時もプレゼントをたくさんもらえるし、恋バナとかたくさんできるからいいけど…
と少し考えたけれど、「やっぱり芽衣だけでいいやっ」といい、会話を終わらせた。
中3*7月*
「夏休みに頑張るか頑張らないかで高校にいけるか決まるんだ。お前ら、ダルまないで頑張れ。」
蝉があちこちに響き渡る中、担任は夏休みに入ろうとする私達に言い放った。
私達中3も受験を意識し始めた時期だ。
芽衣も西高を目指し、中2病から脱出していた。
私も、「このごろ遊んでばっかりだったな」と少し反省し、「夏休みはマジ頑張るっ」と心の中に言い聞かせた。
そして、夏休みは始まった。
ピリリリリリリリ…
AM9:00
携帯のメールの受信音が鳴った。
『芽衣からかな…』
寝癖を直すのに使っていたコテを机の上に置き、携帯に手を伸ばした。
ぴっ。
見たことないアドレス…
一応、気になりメールボックスを開いた。
『隼人だよ』
!?
隼人からだった。隼人とは、クラスでは仲は良いけど、メールアドレスを交換するほどではない。突然のメールで少し戸惑いながら、文章を開いた。
『突然のメールごめん。アドレス、本城から聞いたんだ。登録してくれない?』
…。
芽衣が教えたんだ。もしかして、芽衣は隼人とメル友だったのかな。ま、芽衣が言ったのならいいけど…。
とりあえず、返信するか…。
『いきなりビックリしたよ〜。登録したよ^^もしかして、芽衣とメル友だったの?』
ぴっ。
よしっと。返信完了。
その後、3分も経たないうちに返信が来た。
『うーん、まぁ。そんなとこかな。本城のメルアドは1週間前に教えてもらったんだけど、牧原はなんか、タイミングが合わなくて聞けなかったんだ。本城に牧原のメルアド教えてっていっても全然おしえてくれなくてさ、もう一回言ってみたらやっと教えてくれたんだ。』
そうなんだ…。
この時、私の胸はざわついていた。
芽衣…私になんでも話してくれると思ってたのになぁ。ちょっとショックかも。
まさか、このメールで私の人生の歯車が狂い始めていたなんて、
思ってもみなかった。