一瞬の中の僕ら。

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「美月ちゃん今回の任務ご苦労様。ケガはない??」

コムイさんが言う。見た目からしてわかるというのにわざわざ聞かなくても良いだろうに。

「私は戦わないので。傷が酷いのはあの二人ですよ」

コムイさんは安心したようにため息をついた。

そして私は口を開く。

「戦ってる二人をみているだけでなにもしない私の身の事を気にしてするなんて本当に変ですね。リナリーが敵につかまっているときも、アレン君が左目を潰されたときもただみているだけだったというのに。
私はずっと 後ろで背中をみているだけでしたよ」



「…それは仕方ないことだよ」

コムイさんは困ったように笑った。


「……言われたんです。アレン君に「何で戦わないのか」と」

「話を適当にかえればいいじゃないか」

「そんなことできる雰囲気じゃありませんでした」

コムイさんは 顔を歪めた。

「……困らせてごめんなさい」
私は頭を少し下げた。

「リナリーとアレン君の病室へいってきます」

そういいアレン君の病室へ行く。


きっとコムイさんは今からリナリーのところへ行くだろうから。



「生きていてくれてありがとう」



コムイさんがそんなことを言ったきがした。






扉を静かに開ける。
アレン君はまだ眠っていた。

右目やら頬など身体中に包帯やガーゼを貼っているアレン君がひどく痛々しい。

私はアレン君の柔らかい髪を指に絡める。

窓からさしこむ日の光が白い髪に反射してとてもきれいだ。

「はやく起きてよ…」


何故かその言葉が出た。

任務中に怒鳴られたり手を払われたりしたのに
アレン君に嫌われたかもしれないのに
私はアレン君にはやく目覚めてもらいたいみたい。

「はやく…起きてよ…」


虚しく声が部屋に響いた。




「大変なことになったね

 ラビ 誰もはいってこないように見張っててよ」


コムイさんの声がする。

あれから私は眠ってしまったのか…

目をゆっくり開ける。


「美月ちゃん?起きたんだね」


コムイさんが微笑んだ。



「寝ちゃってごめんなさい

今からアレン君の腕の修理ですか?」


目を擦る。


「そうだよ 今部屋の外にラビがいるからいってくるかい?」


「…はい」


ラビ…久しぶりに聞いた名前だな…


私はアレン君をチラッとみる。


彼はまだ寝てる。


「しつれいしました」


そういい静かに部屋を出た。



「よっ久しぶりだな美月」


部屋を出るとラビが私に抱きつきながら言う。


「久しぶり 最近全然ラビとあってなかったね」


頭を撫でながら答える。

ラビは兎みたいで可愛い。


「例の白髪のエクソシストまだ目覚めないんさ?」


「うん、でもそろそろ目覚めると思う」


 そう言うとラビは扉を開けた。

 コムイさんとアレン君は気付いてないみたい。


「実はね これから君達には本部に戻らずこのまま長期任務について
 もらわなきゃならなくなったんだよ

 詳しい話はリナリーが目覚めた時一緒にする」


「! リナリーはまだ目覚めて…!?」


「大丈夫っしょー

 今ウチのジジイが診てっから

 すぐもとに戻るよ」


 ラビは壁にもたれて言う。


「ラビっす ハジメマシテ」


「…はじめまして」


「…ラビ…急に話し掛けたらアレン君が驚くでしょう」


 私がラビのマフラーの部分を引っ張りながらいう。

 アレン君は私の登場に驚きながら話しかけてきた。


「美月…君は大丈夫ですか?」


「…うんだって戦ってないし」


 そう言いラビを引っ張って無理やり部屋から出る。


 さっきまであんなにアレン君に目覚めてほしかったのに

 何であんな言い方してしまったんだろう…


「美月 あいつと何かあったんさ?」

 ラビは私に引っ張られながら聞いてきた。


「…なんでもない」


「本当さぁ?」


「…何で戦わないんだって言われた…」

 
 ラビには隠し事ができない。

 それはラビが入団してきた時からかわらない。

 
「あららー…でも美月は仕方ないっしょ?」

「仕方ないで終わらせるほど私は特別じゃないよ」


「それも?」

 ラビは私の右肩を指差す。


「…いつか話すんだろ?」


「…うん」


 私が頷くをラビは安心したようにアレン君の部屋に歩きだす。


「ラビ…?」


「今からジジイがあいつの左目治療するんさ 

 その後にでも話せばいい」


「…うん」

 
 私はラビの後ろを静かに俯いて歩いた。





ブックマンがアレン君の治療を終えると私は病室に入った。

……私とアレン君は微妙な距離で静かに部屋でいた。



「…アレン君」


 私が呼ぶとアレン君は顔を上げて私をみる。


「アレン君に話しておかないといけない事があるの」


 そういうとアレン君は私を見ながら頷いた。



「アレン君 何度か私と一緒に任務に行った事あるよね

 何か疑問に思った事は無い?」


 そういうとアレン君は気まずそうに顔を俯けた。


「遠慮しなくていいよ」


 そういうとアレン君は私の手を握ってくる。


「そんなんじゃなくて…」


「?」


「戦ってるとき…っせっかく美月が左眼を治そうとしてくれたのに…それと最低な事を…僕は……すみません」


 アレン君の言葉に私は少し目を開く。


「そんな事考えてたんだ

 別に気にしなくていいのに」


 私がそう言うとアレン君は少し声を上げる。


「そんな事じゃないですっ手を振り払ったり…
 
 しかも後から失礼なこと言っちゃったし…」


 失礼なことって「なんで戦わない」って言葉かな?


「別に気にしなくていいよ。本当のことだし。でもまあ気にしないで。こんな奴同じエクソシストだと思いたくないだろうけど、私戦えないからさ」

そう言うとアレン君はきょとんとする。

それをみて私は少し微笑む。

「私自分の事話すの得意じゃないから意味わからないかも。だから今はなにも聞かないで」





 
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