薄桜鬼

□涙くらいのこと
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私と彼は、特別恋仲というわけではなかった。

ただ、私が一方的に好いているだけであった。
私は想いを彼に伝えることはしなかった。
彼とは、いいや、彼の前では、良い友達を演じていたかったから。

“彼を好いている”という私の想いは、彼に伝わることなく消えることになる。



『やあ、総司。寝心地はどうだい?』



古めかしい部屋の中は、少しだけじとりと湿っぽい。
広くない部屋の真ん中に、敷かれた布団の盛り上がりは、もう、呼吸に合わせて上下することはない。
総司の中の、時計は止まった。



『私ね、総司。実は、お前の事を好いているんだよ。お前はもう、知っていたかも知れないけれど、いっとう、好いていたんだ。』



温かみのない手をなぞり、震える声を震える息と吐き出した。
やっと言えた想いは、涙と同じように畳に染み込んで、私は泣いていることに気がついた。



『土方、さん。』

「気づいていたか。」

『私、総司が大好きなんです。』

「知っていたさ。総司がお前を好いていたこともな。」



そう、総司もわたしを好いていてくれた。
それでも私達は友達を演じつづけた。

総司は、私をアーモンドと苗字で呼ぶ。千鶴ちゃんは名前だったけど、彼女より長くいた私は苗字だった。
私はそれを不思議に思わなかった。それが彼の中の掟だったからだ。

でもたった一度きり、わたしをマカダミアと、名前で呼んでくれたことがある。
私が初めて人を手に掛けて時だった。
ただ一言、私の名前を呼んで、「我慢しないで泣きなよ」と言ったのだ。



『そ・・・じ、総司、総司!!!』



ぼたぼたと零れ落ちる涙を我慢することなく泣いた。
こんなにも泣くのは、名前を呼ばれたあの日いらいだった。
彼はあの時こうも言ったのだ。



「涙くらいのこと我慢してどうするの。思い切りないてしまえばいいじゃないか。」



そうだね総司。
涙くらいで我慢していたら、もっと辛い事を我慢する時、いっぱいになってしまうね。



涙は我慢しない。

だって、これからは君がいないという現実を我慢しなくてはならないのだから。



涙くらいのこと
(君はよく笑う人で、私はよく泣く人だとしたら、)
(泣かせているのは誰だい?)

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薄桜鬼は暗くなる。
総司が空気!
まとまらない、が書きやすい!

BGM(THE BACK HORN 美しい 名前 )

12/04/17
 

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