スタスカ

□最初の瞬間は、
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錫也と付き合い始めたのが2年前。

錫也と結婚したのが1年前。

錫也に大事な報告をするのは、これで何回目だろう。

少しだけ緊張しながら、私は錫也の帰りを待っている。
何度目かのため息をついた時、インターホンがなる。

付き合い始めてから変わらない、独特な鳴らしかたは、確実に錫也の帰りを知らせるものだった。



『お帰りー。』

「ただいま。何か変わったこととか、なかったか?」

『特になかった。錫也は?』

「羊から連絡があった。来週、一時的に帰って来るって。」

『本当?あ、今日ねー中学の時の生物の先生から聞いた話、思い出したんだけど、』

「うん。」



感づかれないよう、何となく話を持ち上げるのが大変だと思ったのは初めてだ。



『あのね、赤ちゃんて生まれた瞬間から肺呼吸になるでしょ。』

「あ、マカダミアは生物とってたんだっけ。それで?」

『肺呼吸になった瞬間、全身に血が回るから赤くなるんだって。だから赤ちゃんらしいよー』

「へぇ。初めて知ったよ。」

『先生がね、赤くなる瞬間は見た方がいいって。だからね、』



錫也が上着を脱ぐ間、すぅっと息を吸って、次の言葉を紡いだ。



『だから数ヶ月後、錫也が赤くなる瞬間、みててね』


その途端、痛いくらいに錫也に抱きしめられる。
まるで何もかも見透かしたみたいに。



「そろそろだと思ってたんだ。ありがとう、新しい家族、受け入れてくれて。」

『ちゃんと立ち会ってね。あたし一人は寂しいから。』

「大丈夫だよ。そうだ、報告しなくちゃな。哉太は凄く可愛がりそうだな。月子は泣くかな。
羊は頻繁に帰ってきたりして。」

『楽しみだね。会えるの!』

「ああ。マカダミア、好きだよ。」

『あたしも!』



来年は一緒にいるのかな。
あなたのお父さんは、とても素敵なお父さんだよ。



最初の瞬間は、
(数ヶ月後、君はちゃんと赤くなったね。)
(瞬間を見ててくれて、手を握ってくれてありがとう。)

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名前が全然でてこないすみません^p^
 

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