夏目友人帳

□私が眠って還るまで
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私はもう、数百年生きて来たけれど、こんなに変な人間に会ったのは初めてだった。

私は妖だから眠らない。
眠気など感じられない。
それでも彼は仕事を終えると、私と布団に入るのだ。

妖力の弱い私は彼に繋がれて生きている。
その命ももう終わりなのだと、日に日に悟っていく私と、気づいているのに繋ぎ続ける彼。

別に式なわけではない。
むしろ私は、彼の名前すら知らないまま、訳もわからず繋がれている。



「寝よう、マカダミア。」

『・・・何故、』



何故私と眠るのですか。

そう問いたかった。
名前も知りたかった。
今日、私は思い切って聞くと決めた。



『何故あなたはわたしと眠るのですか。どうしてわたしを繋ぐのですか。名前はなんていうのですか。』

「・・・初めて、君から質問してくれたね。やはり、繋がれているのは嫌だろう?」



不思議と、繋がれているのは嫌ではなかった。
首を横に振ると、優しい笑みが返ってくる。



「僕は名取。名取周一。君を一度、力の強い妖から救った。もうだいぶ前のことだったから、忘れてしまったかな。」



そういえば昔、人間の男の子に助けてもらった。
あの子だったのか。



「あの時から、君が忘れられなくて。今思うと、僕の初恋だったと思う。大人になって、もっと恋しくなってしまったよ。」



「妖に恋なんて、馬鹿なことだけれど、」と彼は言った。



「偶然、君が消えそうだと聞いたから、つい僕に繋いだ。少しでも、君が消える前に一緒にいたかったんだ。
繋いで悪かったね。」

『わたしは、一緒にねむれないのに。』

「そうだね。」

『わたしは、つめたいからだなのに。』

「今、凄く暖かいよ。」



ぎゅっと名取さんに抱き着かれて、私に体温があると自覚した。こんなのは、初めてだった。



『名取、さん』

「なんだい?」

『わたしは、名取さんが、好きよ。』

「ありがとう。」



どうして好きかは解らなかった。どうしても、好きと言いたかった。



『あたたかい。名取さん、あたたかいね。』

「そうだね。さ、もう寝よう。沢山寝よう。」



眠い。
初めて、眠気を感じた。
嗚呼、眠るってこんな感じなんだなあ。



「ありがとうマカダミア、大好きだったよ。おやすみ、おやすみ。」



ぎゅっと抱きしめられる感覚と聞こえた言葉。

嗚呼、私は還る。
もう眠って、遠くに還るのだ。
何百年という人生から眠りにつく。


名取さん、名取さん



『さよなら、おやすみなさい』



私が眠って還るまで
(私を好きになってくれてありがとう。)
(貴方と眠れて幸せ者です。)

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名取さんわからん!偽物!
突発!バキュン!
 

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