夏目友人帳
□美術部員の話
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得に絵が得意というわけではない。
ただ、歌を歌うのは何だか恥ずかしいというのがあり、音楽ではなく美術を選択した。
今日の課題は【デッサン】。
好きなもの、と言われても、それが一番困るわけで。
「まいったな・・・デッサンなんかしたことないし。」
途方に暮れたとき、木の下で黙々と描く、美術部員のアーモンドさんを発見した。
「あ・・・悪いけど、隣いいかな。」
『どうぞ。』
「アーモンドさんて、美術部員だよな。デッサンて、どうやるか、教えてほしいんだけど、」
『対象物をみて写すだけ。でも私、きっと田沼くんが思ってる以上に上手くないけど。』
「俺に比べたら上手いだろ?」
そう言って彼女のスケッチブックを見ると、世にも奇妙な、彼女が見つめる先にはなにもないのに、へんてこな生物が描かれていた。
「それ、」
『・・・田沼くんには見えないと思うけど。』
「それ、妖じゃないか?アーモンドさんも、みえるのか?」
不躾だとは思ったけれど、聞きたくて仕方なかった。
やっとまた一人、見える人を見つけたのだから。
『見えるわ。田沼くんも見えてたの?』
「いや、俺は気配だけなんだ。・・・ホントは、見える友人を助けるために、見れたらいいんだけど、」
『夏目くんのこと?彼には、きみがいるだけで大分助けになってると思うけれど。』
「・・・でも、見たいんだ。なあアーモンドさん。」
『なあに。』
「俺に、妖の絵、描いてくれないか?気配だけ感じるやつらを、見たいんだ。」
『私、デッサンは下手よ。それでもいいなら。』
「ありがとう。」
気配だけでも出会っているのだから。
こうして友人が増えるのだから。
姿をしっかり見てみたいんだ。
それから俺のクリアファイルには、一人の美術部員からもらう絵がふえていく。
美術部員の話
(自分も見えたら、彼女と一緒にデッサン出来るのに、なんて。)
(本当にみたいのは、妖?それとも彼女の真剣な眼差しか)
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デッサンできないのは私。
イラストは下手ながら描けるけど模写類はとことん苦手です^ω^